Q&A
労働時間・休日・休憩
Q
労働時間の基本的ルールを教えて下さい。
A
(1)労働時間規制の原則(労基法32条と適用除外)
労基法は原則として使用者に対し、労働者を使用する場合、1日8時間、週40時間以内の労働とするよう義務づけています(労基法32条)。なお事業場で常時使用する労働者が10人未満の商業・サービス業について法定労働時間1週44時間(1日8時間は変わらず)等の特例が設けられています(労基法40条、労基則25条の2第1項)。
同条違反に対し、「6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が定められているところ(労基法119条第1項)、以下のとおり適用除外規定があります。まず労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外(同法41条)があり、農業・畜産・水産業等の事業に従事する労働者(同1号)、管理監督者または機密事務取扱者(同2号)、監視又は断続的労働に従事する労働者(同3号、行政官庁の許可を要する)は、前記の労働時間規制が適用されません。
また労基法36条に基づく時間外・休日労働に関する協定届(以下、36協定(一般的にサブロク協定と呼びます))も重要です(詳細はこちら)。
使用者と従業員過半数で組織する労働組合または過半数代表者が36協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出た場合、同協定に定める労働時間の延長事由、延長時間等の範囲内で、使用者が1日8時間、週40時間を超えて時間外労働等を行わせることを可能とします(36協定に基づき時間外労働を行わせる際には、別途、同協定のほか、労働契約・就業規則等の法的根拠を要する旨判示するものとして日立製作所武蔵工場事件最1小判平3.11.28労判594号7頁参照)。
なお労基法32条等に定める規制を超えて時間外労働等を行わせる場合、36協定の有無を問わず、労基法37条に基づき、当然に時間外割増賃金の支払義務が生じます。
(2)働き方改革と36協定における延長時間規制
2018年6月末に成立した働き方改革関連法(改正労働基準法関連部分)は、36協定において延長時間を定める場合、まずは以下の範囲内で設定することを求めています。
さらに年6回以内の特別条項を定める場合には、以下の上限規制を設けることとしました。
●単月は、法定時間外労働と法定休日労働を合算した時間数が100時間未満とする(同条5項・6項)
●対象月の初日から1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における法定時間外労働と法定休日労働の1箇月当たりの平均時間は80時間を超えないこと(同条6条)
これらの上限規制の施行について、大企業は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日とし、さらに自動車運転の業務等については、当面の間、適用猶予としたところ、自動車運転の業務等についても2024年4月1日から、以下の上限規制が適用されることとなります(その他、医業に従事する医師および工作物の建設の事業等についてはこちら)。
さらに過労死等の防止の観点から、自動車運転者の運転時間・総拘束時間等の改善を求められることとなり、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示。平成元年2月9日労働省告示第7号)が2022年12月23日付けで改正されており、こちらも2024年4月1日から適用されます(こちら)。
(3)多様な労働時間制度について
他方で業務の繁閑が激しい業務や外勤・在宅勤務など場所的拘束が緩やかな業務、さらには高度専門業務や企画立案業務に専ら従事し、自律的な就労実態の広がりも見られます。このような中、労基法に設けられたのが、多様な労働時間制度(以下図)です。他方で、同制度の導入・運用をめぐっては、残業代支払義務を潜脱する目的での導入や、長時間労働による健康障害などの課題も後を絶ちません。このため多様な労働時間制度自体には、それぞれ厳格な導入要件や労基署等への届出・監督、さらには労使決定の義務化などが設けられており、当該規制内容を正確に理解しておくことが極めて重要です。
週・日の労働時間枠の例外 | 変形労働時間制度・フレックスタイム制度 |
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労働時間数の算定方法の特例 | 事業場外みなし労働制・裁量労働制 |
特定高度専門業務等の適用除外 | 高度プロフェッショナル制度 |