コンビニでアルバイトをしているのですが、お客さんの中には、店員の接客態度についてクレームをつけてくる人がいます。私も嫌な思いをしたことがあるのですが、仲間の店員は2時間近くクレームを付けられたあげく土下座を要求されました。店長は、傍らでおろおろしているだけで、何ら助けを出してくれません。やはり、お店にはキチンと対応してもらいたいと思います。また、このような事態に直面したら、お客さんの態度がエスカレートしないよう対応するにはどうしたらよいでしょうか?

近年、顧客、取引先等からの著しい迷惑行為であるカスタマーハラスメントが社会的に問題となっています。ご指摘のとおり、カスタマーハラスメントに対して、会社には適正な対応が求められます。
これまで、厚生労働省は、カスタマーハラスメントの防止対策の一環として、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成し、その周知を図ってきました。マニュアルでは、カスタマーハラスメントに関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うこと、被害を防止するための取組を行うこと等が規定されています。事業主には、マニュアルに沿って、対応を行うことが求められています。なお、厚生労働省が作成したリーフレットには、カスタマーハラスメントに発展させないための対応についても記載されています。
そして、対策を強化するため、令和7年6月に労働施策総合推進法が改正され、カスタマーハラスメント防止が法律で規定されることになりました。なお、改正法の施行日は、公布の日(令和7年6月11日)から起算して1年6月以内で政令で定める日とされています。改正法では、事業主は、カスタマーハラスメントにより労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとされています(改正労働施策総合推進法33①)。また、厚生労働大臣は、カスタマーハラスメント防止のために事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとされています(同法33④)。

詳しく解説

1法律におけるカスタマーハラスメントの定義

「職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が 従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境を害すること」(同法33①)

2カスタマーハラスメントに発展させないために(厚生労働省リーフレット「カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!」から)

(1)現場対応者による初期対応においては、まずは誠意ある対応をしつつ、状況を正確に把握し、事実確認をする必要があります。
ただし、顧客等から暴力行為やセクハラ行為を受けた場合は、すぐに現場監督者に相談する等事案を引き継ぎ、一人で対応しないようにすることが重要です。
現場対応、電話でのクレーム対応のどちらにおいても、以下の事項に留意し、まずは顧客等の主張を傾聴することが求められます。現場対応の場合は、不要なトラブルを避けるため、初期対応の時点で、複数名で対応することもよいでしょう。

〔発展させないためのステップ〕

  • ① 対象を明確にして謝罪する
    対象を明確にしたうえで限定的に謝罪します。
    「この度は不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」といったように不快感を抱かせたことに謝ります。正確に状況が把握できていない段階では、企業として非を認めたような発言はせず、事実確認をして社内で判断したときに、過失の程度に応じた謝罪をします。
  • ② 状況を正確に把握する
    顧客等が主張する内容を正確に把握します。顧客等から話を聞く際には、途中で発言を遮ることや反論はせず、まずは一通り事情を確認します。
    一通り事情を確認した後、顧客等が話す内容に不明確なものがあれば確認をし、不足する情報があれば追加で意見をもらい、顧客等の勘違いがあれば正しい情報を提供します。
  • ③ 現場監督者(一次相談対応者)または相談窓口に情報共有する。
    顧客等から確認した情報は、現場監督者または相談窓口対応者に共有します。
    相談対応者が正確かつ迅速に状況を把握するため、現場対応者は顧客等からの要望のみならず、できるだけ事実関係を時系列で整理して報告します。

(2)クレームの初期対応は、対応者が現場対応者か、電話受付対応者かによっても、その対応の内容が異なります。また、顧客等の求めに応じて訪問するケースも想定され、現場での対応時、電話での対応時、顧客訪問での対応時と各社員に合わせ留意するポイントをまとめておくと良いでしょう。

①現場での対応

  • ● 店頭で対応せず、応接室等の個室に招いて2人以上で対応する(時間、人、場所を変えて対応)。
  • ● 相手が感情的になっていても、丁寧な話し方で冷静に対応し、よく話を聞く。また言葉遣いに注意し、専門用語などは使わないようにする。
  • ● 質問を交えながら、詳細に情報を確認し、メモをとって要点を確認する。
  • ● 極力議論を避け、問題を解決しようとする前向きな姿勢を感じさせる。
  • ● その場しのぎの回答はせず、対応できないことははっきり断る。
  • ● 相手を落ち着かせたい場合は、後で確認して回答するなど冷却期間を設ける。等

②電話での対応

  • ● 苦情を専門に受け付けるため、専用電話を設置して録音ができるようにしておく。
  • ● 基本的には、第一受信者が責任を持ち、問い合わせ案件のたらい回しをしない。
  • ● 丁寧な言葉遣いで、相手がゆっくりと理解できるよう説明する。
  • ● 顧客等の発言内容と齟齬が出ないよう、メモを取りながら話を聞き、復唱して確認する。
  • ● 対応できることとできないことをはっきりさせ、相手に過大な期待を抱かせない。
  • ● 即時回答できない内容については、事実を確認してから追って返事する。等

③顧客訪問による対応

  • ● 冷静になりにくい時間帯(夜間や早朝)の訪問は避ける。
  • ● 喫茶店など周囲から聞かれる場所や決められた場所以外には行かない。
  • ● あらかじめ訪問先や問題点について情報を集め、問い合わせ内容への対応方針を決めておく。
  • ● まずは、相手の言い分を聞くだけにする。
  • ● できるだけ2人で行く(1人では対応させない。一方、多人数での訪問を控える。)
凡例
法令の略記
・労基法:労働基準法 ・労基則:労働基準法施行規則 ・年少則:年少者労働基準規則 ・最賃法:最低賃金法
・労契法:労働契約法 ・賃確法:賃金の支払の確保等に関する法律 ・安衛法:労働安全衛生法
条文等の表記
・法令略記後の数字:該当条文番号 ・法令略記後の○囲みの数字:該当項番号 ・法令略記後の( )囲みの漢数字:該当号番号
例:労基法12①(二):労働基準法第12条第1項第2号
通達の表記
・発基:大臣又は厚生労働事務次官名で発する労働基準局関係の通達 ・基発:労働基準局長名で発する通達
・基収:労働基準局長が疑義に答えて発する通達 ・婦発:婦人局長(現 雇用均等・児童家庭局長)名で発する通達