トラック運転業務において、荷主先の駐車場等で長時間の待機が強いられ、トラック内から出られない状況が生じています。この待機時間は、労働時間に当たるのでしょうか。

トラック運転者の長時間労働抑制のためには、運転時間の管理とともに、長時間の荷待ちが大きな課題となっています。この荷待ち時間の労働時間性がまず問題となるところ、実作業は断続するため実作業の間、自動車運転者が手待ちをしているような場合には、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない場合は労働時間に該当すると考えられます。運転者に対し、運転のほか貨物の積卸を行わせることとし、出発時刻の数時間前に出勤を命じているような場合において、貨物の積込以外全く労働の提供がない、いわゆる手待ち時間は労働時間であることとされています(昭33.10.11基収6286号)。また、近時の裁判例(東京地判令4.9.28 A興業㈱割増賃金等請求事件)では、使用者から、車内での待機・運転が義務づけられている場合は明確にその「労働時間」を肯定されています。その一方、使用者から指示を受けることがなく、労働から離れることが保障されている場合には「休憩時間」と解しており、荷主先等において休憩施設等がなくとも労働からの解放が保障されている場合には同様としています。
以上のとおり、労働時間に該当するか否かは個別具体的に判断されますが、設問でのトラック運転者の荷待ち時間は、使用者等から車内での待機を義務づけられている限り、労働時間に該当します。トラック運転者に対する適切な労務管理にあたり、荷待ち時間の短縮が必要不可欠であるところ、2022年12月23日から、厚生労働省は、荷主・元請運送事業者の都合による「長時間の荷待ち」の改善に向けて、荷主・元請運送事業者に対する「要請」等の取組を開始しており(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29877.html)、厚生労働省HPにおいて、「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」が設置されています(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/nimachi.html)。
凡例
法令の略記
・労基法:労働基準法 ・労基則:労働基準法施行規則 ・年少則:年少者労働基準規則 ・最賃法:最低賃金法
・労契法:労働契約法 ・賃確法:賃金の支払の確保等に関する法律 ・安衛法:労働安全衛生法
条文等の表記
・法令略記後の数字:該当条文番号 ・法令略記後の○囲みの数字:該当項番号 ・法令略記後の( )囲みの漢数字:該当号番号
例:労基法12①(二):労働基準法第12条第1項第2号
通達の表記
・発基:大臣又は厚生労働事務次官名で発する労働基準局関係の通達 ・基発:労働基準局長名で発する通達
・基収:労働基準局長が疑義に答えて発する通達 ・婦発:婦人局長(現 雇用均等・児童家庭局長)名で発する通達