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凡例

法令の略記
・労基法:労働基準法
・労基則:労働基準法施行規則
・年少則:年少者労働基準規則
・最賃法:最低賃金法
・労契法:労働契約法
・賃確法:
  賃金の支払の確保等に関する法律
・安衛法:労働安全衛生法
条文等の表記
・法令略記後の数字:該当条文番号
・法令略記後の○囲みの数字:
  該当項番号
・法令略記後の( )囲みの漢数字:
  該当号番号
例:労基法12①(二):
  労働基準法第12条第1項第2号
通達の表記
・発基:大臣又は厚生労働事務次官名で発する労働基準局関係の通達
・基発:労働基準局長名で発する通達
・基収:労働基準局長が疑義に答えて発する通達
・婦発:婦人局長(現 雇用均等・児童家庭局長)名で発する通達

Q&A

労働時間・休日・休憩

Q

労働時間の適正な把握方法について教えて下さい。

A

(1)ヨンロク通達と新ガイドライン
2001年4月13日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(以下、ヨンロク通達)を発出後、厚労省・労働基準監督署は各企業に対し、事務系社員含めて労基法上の労働時間を適正把握するよう厳しい指導を展開しています(なおヨンロク通達は2016年1月「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、新ガイドライン)に見直し(こちら))。
そもそも厚労省がヨンロク通達を発出することとなったのは、2000年11月30日付の労働省中央労働基準審議会における建議が契機となりました。同建議では「使用者が始業、終業時刻を把握し、労働時間を管理することを同法が当然の前提としていることから、この前提を改めて明確にし、始業、終業時刻の把握に関して、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなど、現行法の履行を確保する観点から所要の措置を講ずることが適当である」ことが示されました。これを受け、全国の労働局・労基署に対し、労働時間関係の指導に係る基準を示すとともに、「基準の周知を図り、その遵守のための適切な指導を行う」よう示達したものがヨンロク通達に他なりません。
その後、2016年1月に新ガイドラインが示されることとなりますが、同ガイドラインはまず使用者に対して、以下の措置を講じることを求めています。

【原則】使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること
●始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法(いずれかの方法)
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

【例外】上記ア・イの方法によることなく、自己申告によりこれを行わざるをえない場合、使用者は以下の措置を講ずること(以下要旨)
①自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
②実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適切な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明をすること
③労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で、時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じない 等

また新ガイドラインでは、使用者が労働時間の把握方法につき、自己申告により行う場合、新たに以下の点などを適切に講ずべきことを求めます。「実態調査の実施の上、所用の労働時間の補正をすること」、「特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること」を求めるものです。
さらに自己申告による労働時間把握を行っている場合、自己申告時間と事業場内にいた時間との齟齬理由を申告させる際、以下の措置を使用者に求めます。「その理由等を、労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと」。
その一方、同通達は管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る)につき、労基法上、適法な導入・運用である限り、適用除外とされました。同適用除外対象者についても、長時間就業に伴う健康障害など安全衛生上の課題が生じうるところ、安衛法では新たに以下規制を設けることとなります。

(2)改正安衛法における「労働時間の状況」の把握義務
2019年4月施行の改正安衛法は働き方改革関連法の一部として一括審議され、2018年6月末に成立されましたが、同改正の趣旨目的としては、産業医・産業保健機能と労働者の健康管理の強化が挙げられています。そのため、まずは安衛法上の長時間労働者の面接指導に係る適用を拡大しましたが、その前提として面接指導対象労働者を的確に把握し、面接指導さらには事後措置を的確になすことが強く求められます。そこで本改正法は、事業者に対し、新たに厚生労働省令で定める方法により「労働時間の状況」を把握しなければならないこととしました(改正法66条の8の3 なお罰則規定は設けられておらず)。
この「労働時間の状況」について、解釈通達(平成30年12月28日付基発1228第16号)では以下の定義を示しています。「労働時間の状況の把握とは、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものである」とします。
また「労働時間の状況」の把握の方法については、施行規則において「タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」と定められました(安衛則52条の7の3第1項)。事業者は、これらの方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じることも新たに義務づけられます(同第2項)。
この「労働時間の状況」の把握方法については、タイムカードによる記録、PC等のログ記録のほか、「その他の適切な方法」としますが、方法の一つとして労働者本人の自己申告による把握が考えられます。これについて解釈通達では、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」にのみ認められるとし、以下の例がこれにあたるとします。
「例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合」とします。他方で「当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断する」としており、直行直帰の場合であっても、事業場外から社内システムにアクセス可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合には、「自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない」との立場を示しており、自己申告による把握は最小限に留めるべきことを明らかにしました。以上の把握義務は、通常の労働者のみならず、前記のとおり、管理監督者、裁量労働対象者なども含まれるところであり、健康確保の観点からの適切な把握管理が使用者に求められています。

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