先日会社を自己都合退職しました。今後の求職活動に備えて、これまで勤めていた会社に、退職の事由や、雇用された期間、従事した業務などを記載した証明書を出してほしいと思いますが、このような請求はできるのでしょうか。

使用者は、労働者の退職の場合において、労働者から使用期間、業務の種類、その事業での地位、賃金又は退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。)について証明書を求められた場合、遅滞なく証明書を交付する義務があります(労基法22①)。
交付すべき証明書の記載事項は、使用期間、業務の種類、その事業での地位、賃金又は退職の事由(解雇の場合はその理由を含む。)であり、これらの事項については、労働者から請求があった場合には必ず記載しなければならないものです。
一方、使用者は、労働者の請求しない事項については、記載してはならないとされています(労基法22③)。

以上のとおり、会社に対し、上記の事項について記載した証明書の交付を請求することができます。
また、上記事項のうち、記載を希望しない事項については請求せず、希望する事項だけ記載した証明書の交付を受けることができます。
もし、請求したにもかかわらず交付されない場合には、労働基準監督署に相談してください。

詳しく解説

1退職の事由とは(H11.1.29基発45、H15.12.26基発1226002号)

労基法22条1項の「退職の事由」とは、自己都合退職、勧奨退職、解雇、定年退職等、労働者が身分を失った事由を示すものであり、解雇の場合には、解雇の理由も「退職の事由」に含まれます。

2使用者の交付義務(H11.3.31基発169号)
  • ア 使用者は、労働者が請求した事項についての事実を記載した証明書を遅滞なく交付してはじめて労基法上の義務を履行したものと認められるものです。
    労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合は、使用者は、自らの見解を証明書に記載し遅滞なく労働者に交付すれば、労基法違反とはなりませんが、それが虚偽であった場合には、労基法上の義務を果たしたことにはならないものと解されます。
  • イ 退職時の証明書の用途は、労働者に委ねられており、使用者の交付義務と関わらないものです。
  • ウ 退職時に会社から交付される書類としては離職票がありますが、離職票は公共職業安定所に提出する書類であるため、退職時の証明書に代えることはできないとされており、離職票の交付をもって使用者の交付義務を果たしたものとは認められません。労働者は、離職票を交付されている場合にも、これとは別に、退職時の証明書を請求することができます。
  • エ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、退職時の証明書に秘密の信号を記載してはならないとされています(労基法22④)。
3請求の回数、時期(H11.3.31基発169号)
  • ア 労働者が退職時の証明を求める回数に制限はありません。
  • イ 退職時の証明の請求権の時効は、労基法115条により退職時から2年とされています。請求は、必ずしも退職と同時でなければならないものではありませんが、退職時から2年を経過してから請求した場合には、証明書の交付を受けられないこともありますので、ご留意ください。
4退職事由に係るモデル退職証明書(H11.2.19基発81号)

厚生労働省から、退職事由に係る退職証明書のモデル様式が次のとおり示されていますので、参考としてください。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/130220-1.pdf

凡例
法令の略記
・労基法:労働基準法 ・労基則:労働基準法施行規則 ・年少則:年少者労働基準規則 ・最賃法:最低賃金法
・労契法:労働契約法 ・賃確法:賃金の支払の確保等に関する法律 ・安衛法:労働安全衛生法
条文等の表記
・法令略記後の数字:該当条文番号 ・法令略記後の○囲みの数字:該当項番号 ・法令略記後の( )囲みの漢数字:該当号番号
例:労基法12①(二):労働基準法第12条第1項第2号
通達の表記
・発基:大臣又は厚生労働事務次官名で発する労働基準局関係の通達 ・基発:労働基準局長名で発する通達
・基収:労働基準局長が疑義に答えて発する通達 ・婦発:婦人局長(現 雇用均等・児童家庭局長)名で発する通達