第15章 フリーランスってな~に?
◆第1ステージ概説
事業者とフリーランス全般との取引には独占禁止法(注1)や下請法(注2)を広く適用することが可能です。すなわち、独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランスとの取引にも適用されます。また、下請法は、取引の発注者が資本金 1,000 万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランスとの取引であれば適用される場合があります。加えて、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されます。
(注1)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
(注2) 下請代金支払遅延等防止法
(注1)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
(注2) 下請代金支払遅延等防止法
◆NG1 解説
「じゃあ頼みやすいじゃない?1週間納期早めてもらってよ!それで、もし納期に間に合わないようなら、デザインは受け取らなくて良いわ!」
優越的地位の濫用として問題となる行為とは、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」行われる、独占禁止法第2条第9項第5号イからハまでのいずれかに該当する行為です。役務の成果物の受領拒否、報酬の支払い遅延、報酬の減額、著しく低い報酬の一方的な決定、やり直しの要請、一方的な発注取り消し、役務の成果物に係る権利の一方的な取り扱い、不当な経済上の利益の提供要請、合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定などが優越的地位の濫用につながり得る行為です。
◆NG2 解説
「書面で約束したわけじゃあないのでしょう?いつだって変更できるじゃない!」
発注事業者が役務等を委託するに当たって、発注時の取引条件を明確にする書面を交付しない、又は、フリーランスに交付する書面に発注時の取引条件を明確に記載しない場合、発注事業者は発注後に取引条件を一方的に変更等しやすくなり、後に、当該変更等が行われたことを明らかにすることが困難になりかねません。このような状況は、優越的地位の濫用となる行為を誘発する原因とも考えられ、これを未然に防止するためには、発注事業者は当該フリーランスが発注時の取引条件を書面で確認できるようにしておくことが必要です。このように、優越的地位の濫用となる行為の誘発を未然に防止するという意味において発注時の取引条件を明確にすることが困難な事情があるなどの正当な理由がない限り、発注事業者が当該書面を交付しないことは独占禁止法上不適切です。なお、下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者がフリーランスに対して、下請事業者の役務等の提供内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しない場合は、同法第3条で定める書面の交付義務違反となります。
◆第2ステージ概説
形式的には雇用契約を締結せず、フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、個々の働き方の実態に基づいて「労働者」かどうかが判断されることとなり、労働関係法令が適用されるか否かに関わってきます。労働関係法令における「労働者」の概念は、大きく分けて2つあります。1つは、 労働基準法第9条に規定する「労働者」、もう1つは労働組合法第3条に規定する「労働者」です。「労働者」に該当すると判断された場合には、労働基準法や労働組合法等の労働関係法令に基づくルールが適用されることとなります。
◆NG3 解説
「いやいやいや。オーダーはナシってことにしてもらえる?」
取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、正当な理由がないのに、 一方的に、当該フリーランスに通常生ずべき損失を支払うことなく発注を取り消す場合であって、当該フリーランスが、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、 優越的地位の濫用として問題となります(独占禁止法第2条第9項第5号ハ)。
◆NG4 解説
「そんなこと言っても、フリーランスだから仕方がないよ。フリーランスはどんな場合でも最低賃金とか一切関係ないからね。報酬は一切出せません。」
フリーランスが、請負などの契約で仕事をする場合であっても、個々の発注者との関係で、判断基準に照らして労働基準法における「労働者」と認められる場合は、労働基準法の労働時間や賃金などに関するルールが適用されることとなります。労働基準法の他にも、労働安全衛生法、労働契約法、最低賃金法等の個別的労働関係法令が、労働基準法における「労働者」に該当する者に適用されます。また、フリーランスが、発注者等との関係で、労働組合法における 「労働者」と認められる場合は、団体交渉等について同法による保護を受けることができます。この場合、発注者等は、労働組合からの団体交渉を正当な理由なく拒むことや、労働組合の組合員となったこと等を理由とする契約の解約などの不利益な取扱いをすることが禁止されます。
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