多様な働き方の一つとしてだけでなく、ギグ・エコノミー(注)の拡大による経験ある高齢者の雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などの観点からも、近年、「フリーランス」に注目が集まっています。
フリーランスの方々が安心して働き、活躍をすることは、まさに日本の成長の鍵です。
こうしたフリーランスとして安心して働ける環境の整備に向けた取組として、政府は「フリーランスの方々と事業者が取引をする際に、法律をふまえると、どのような点に気をつけるべきか」を整理したガイドラインを作成しました
このパンフレットは、その内容を簡潔にまとめたものです。
(注)ギグ・エコノミー:インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く就業形態
このガイドラインでは「フリーランス」を、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者としています。フリーランスは、個人で事業を行う方であり、原則として、雇用という働き方ではなく、労働基準法などの労働関係法令が適用されない場合があることに留意が必要です。
✓フリーランスが事業者と取引をする際には、その取引全般に独占禁止法が適用されます。
また、相手の事業者の資本金が1,000万円を超えている場合は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)も適用されます。(注)
✓また、業務の実態などから判断して「労働者」と認められる場合は、労働関係法令が適用されるので、発注する事業者等は留意が必要です。
雇用と認められる場合の判断基準については、「フリーランスへの労働関係法令の適用」以降を参照ください。
(注)事業者とフリーランスとの取引が、下請法にいう親事業者と下請事業者との取引であって、①製造委託、②修理委託、③情報成果物作成委託、④役務提供委託に該当する場合には、下請法の規制の対象となります。
フリーランスが取引を行う際は、発注事業者が以下の点を遵守しているか見極めましょう
✓取引の際に、発注事業者とフリーランスとの間では強者対弱者の関係になることがあります。
✓優越的地位にある事業者が、その地位を利用して、フリーランスに、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることで、公正な競争を阻害するおそれがあります。(詳しくはガイドライン3ページ・32ページ参照)
✓このような行為は、独占禁止法・下請法の規制対象となる可能性があります。
発注事業者が、発注時に取引条件を明確にする書面を交付しないことは、その時に取引条件を明確にすることが困難な事情があるなどの正当な理由がない限り、独占禁止法上不適切です。
なお、下請法では、資本金1,000万円を超える発注事業者が、規制対象の取引をフリーランスに発注する場合、このような書面の交付は義務となっています。
フリーランスが事前に承諾すれば、メールやSNSによる交付も可能ですが、その場合はダウンロード機能があるなど、フリーランスが記録できるようなサービスになっていることが必要です。
公正な競争のための法令を遵守しましょう。
契約で決めた日までに報酬が支払われなかったり、一方的に支払日を遅く設定された場合等は…
▶『報酬の支払遅延』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン5ページ参照。
契約どおりの仕事を行ったのに決めていた報酬額が支払われなかったり、業務量が増えた場合は報酬額を増やすと合意していたのに報酬額が変わらない場合等は…
▶『報酬の減額』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン6ページ参照
通常の取引時の報酬と比べて、著しく低い金額で仕事を受けるように報酬を一方的に決定された場合等は…
▶『著しく低い報酬の一方的な決定』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン6ページ参照
契約に基づいて仕様通りに業務をした後に、やり直しをさせられた場合等は…
▶『やり直しの要請』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン7ページ参照
発注された仕事を進めていたにも関わらず、一方的に発注を取り消され、既に発生していた費用が支払われない場合等は…
▶『一方的な発注取消し』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン8ページ参照
発注された仕事の過程で発生した、フリーランスの著作権などの権利の扱いを、発注事業者が一方的に決める場合等は…
▶『役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン9ページ参照
発注事業者の都合によって、成果物を受け取ろうとしない場合等は…
▶『役務の成果物の受領拒否』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン10ページ参照
返品の条件が不明確であるにもかかわらず、一度、納品した成果物を返品された場合等は…
▶『役務の成果物の受領拒否』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン11ページ参照
業務に必要ではないのに、商品の購入を指示された場合等は…
▶『不要な商品又は役務の購入・利用強制』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン11ページ参照
協力金の負担や、発注内容にないシステムの追加開発・デザイン作成等の負担を要請された場合等は…
▶『不当な経済上の利益の提供要請』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン12ページ参照
発注事業者の一方的な都合で秘密保持の範囲を決められたり、発注事業者から「業務で得たスキルや知見があるから他社の仕事を受けるな」と言われたりした場合等は…
▶『合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定』に該当するおそれがあります
詳しくはガイドライン13ページ参照
これまでに挙げたような行為類型に該当しない場合であっても、取引上の地位が優越している発注事業者が、一方的に取引の条件を設定したり、取引の条件を変更したり、又は取引を実施したりする場合に、正常な商慣習に照らしてフリーランスに不当に不利益を与えることとなるときは、「優越的地位の濫用」として問題になります(詳しくはガイドライン14ページ参照)。
このガイドラインにおける仲介事業者とは、例えば、手数料や利用料を徴収し、フリーランスと発注事業者をマッチングするためのサービスを提供する事業者です。
フリーランスは、仲介事業者を上手に活用することで、仕事の機会を獲得・拡大させることができます。
一方、フリーランスと仲介事業者との取引が増加する
中で、仲介事業者がフリーランスとの取引上優越した地位に立ち、その地位を利用して、フリーランスに不当に不利益を与えることも考えられます。
仲介事業者が、例えば、以下のような規約の変更を一方的に行い、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となります。
詳しくはガイドライン16ページ参照
フリーランスは、見かけ上雇用関係になくても、労働者性が認められることがあります。その場合、労働関係法令の保護を受けます。
仕事を受けたけど、発注者から仕事のやり方や作業の時間まで事細かに指示されるし、予定にない仕事も頼まれたりでずっと働きづめ…
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労働基準法上の労働者に当たる場合は…
労働基準法の労働時間や賃金などに関するルールが適用されます。
労働安全衛生法、労働契約法等の個別的労働関係法令も、基本的に適用されます。
労働組合に入ったのに、団体交渉に応じてもらえない…
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労働組合法上の労働者に当たる場合は…
労働組合法により、団体交渉等について保護(正当な理由のない団体交渉拒否等の不当労働行為の禁止など)を受けることができます。
※労働組合法は労働基準法より労働者の範囲が広く、労働基準法上の労働者に該当すれば、労働組合法上の労働者にも該当する。
労働基準法・労働組合法における「労働者」に当たるか否か、すなわち「労働者性」の判断は、次ページ以降で解説します。
労働基準法において「労働者」に当たるかは、以下のような項目を確認し総合的に判断されます。
以下のような実態がある方は、労働基準法上の「労働者」に当たる場合があります。
※このような実態があれば直ちに「労働者」となるわけではなく、最終的には、契約内容やその他の要素を含めて総合的に判断されます。
労働組合法において「労働者」に当たるかは、以下のような要素を確認し総合的に判断されます。
https://www.cas.go.jp/jp/houdou/20210326guideline.html
内閣官房 成長戦略会議事務局(雇用・人材担当) 電話番号:03-5253-2111(代表)
公正取引委員会 事務総局 経済取引局 総務課 経済調査室 電話番号:03-3581-4919
中小企業庁 事業環境部 取引課 (特に別添「契約書のひな型例」について) 電話番号:03-3501-1669
厚生労働省雇用環境・均等局在宅労働課/ 労働基準局監督課/ 労働基準局労働関係法課電話番号:03-5253-1111(代表)
雇用環境・均等局在宅労働課(全体)
労働基準局監督課(労働基準法における「労働者性」について)
労働基準局労働関係法課(労働組合法における「労働者性」について)
電話番号:0120-532-110 URL:https://freelance110.mhlw.go.jp
あいまいな契約・ハラスメント・報酬の未払いなど、フリーランス・個人事業主の契約上・仕事上のトラブルについて、無料相談できる窓口です。
弁護士が、メール・電話・対面・ビデオ通話等により相談対応を行います(メールや電話でのご相談は匿名でも対応可能です。)。
運営:第二東京弁護士会
運営にあたっては、フリーランスに関する関係省庁(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)と連携し、必要に応じて関係機関を案内します。