第13章 テレワークのルールを見直せ!

概説

テレワークは、インターネットなどを活用し自宅などで仕事をするものです。テレワークは、働く時間や場所を柔軟に活用することのできる働き方であると同時に、ウィズコロナ・ポストコロナの「新たな日常」、「新しい生活様式」にも対応したものです。
テレワークの導入と実施に当たって注意しておかなければならないことは、労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働関係法令が適用されることです。したがって、テレワークが働く時間を柔軟に活用できるとはいっても、労働基準法の労働時間に関する様々な規定は当然適用されますし、また、使用者はしっかりと労働時間を管理しなければなりません。
テレワークの導入に当たっては、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めることが重要です。就業規則の作成義務のある事業場にあっては、テレワークのルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知する必要があります。就業規則の作成義務がない事業場であっても、テレワークのルールについて、就業規則に準ずるものを作成したり、労使協定を結んだりすることが望ましいです。いずれにせよ、テレワークのルールを明確にしておくことにより、労働者は安心してテレワークを行うことができますし、また、使用者にとっても労働時間の管理などを的確に行うことができるようになります。

◆NG1 解説

「特に始業・終業時刻って決めてないわけだから、何とかやり繰りしてくれないかな」
労働契約を締結する際、使用者は、労働者に労働条件を明示することとなっています。そして、労働条件通知書等の書面によって明示が必要とされる事項の中に始業・終業時刻が含まれています。この労働条件の明示義務は、テレワークの場合であっても同じです。
事業所において新たにテレワークが導入される場合にあっては、労使で十分に話し合い、ルールを定めることが重要です。そして、既に雇っている労働者について、テレワークの導入によって労働時間など労働契約の内容に変更が生じる場合には、労働契約の変更を労働条件通知書等の書面に記載して労使の双方が確認することが、トラブルを避けるためにも重要です。
また、新しく雇う労働者にテレワークを行わせる場合にあっては、労働契約を締結する際、当然、始業・終業時刻を含むテレワークの時間についても明示する必要があります。

◆NG2 解説

「きちんと労働時間を把握できないから、悪いけど残業はナシという処理になるからね」
使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適正に管理する責務を有しています。これは、テレワークの場合についても同じです。ただ、テレワークにおける労働時間の管理については、テレワークが本来のオフィス以外の場所で行われるため使用者による現認ができないなど、労働時間の把握に工夫が必要になると考えられます。
例えば、テレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録、サテライトオフィスへの入退場の記録等による労働時間の把握といった方法も考えられます。実際には、テレワーク勤務者から始業時・終業時にメールや電話で上長に連絡し、労働時間を管理する方法をとる企業は多くあります。また、終業時のメールに作業日報として1日の業務内容をテレワーク勤務者に提出させる運用をとっている企業もあります。また、最近ではクラウドによる勤怠管理システムを導入している企業も増えてきました。
いずれにせよ、使用者がテレワークの場合における労働時間の管理方法をあらかじめ明確にしておくことにより、労働者が安心してテレワークを行うことができるようにするとともに、使用者にとっても労務管理や業務管理を的確に行うことができるようにすることが望ましいです。
なお、テレワークの場合であっても、残業を行わせる場合には、36協定が必要であり、また、残業については割増賃金が支払われることは、言うまでもありません。

◆NG3 解説

「テレワーク中の不注意によるケガだから、労災の対象にはならないわよ」
テレワークを行う労働者については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負います。したがって、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおけるケガなどは、労災保険法が適用され、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められません。在宅勤務を行っている労働者等、テレワークを行う労働者については、この点を十分理解していない可能性もあるため、使用者はこの点を十分周知することが望ましいです。
また、使用者は、労働者が負傷した場合の災害発生状況等について、使用者や医療機関等が正確に把握できるよう、当該状況等を可能な限り記録しておくことを労働者に対して周知することが望ましいです。

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