第11章 労働災害を未然に防げ!

概説

労働災害とは、業務が原因で労働者が負傷したり、病気になったりすることをいいます。具体的には、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること(労働安全衛生法第2条第1号)」をいいます。国内では、労働災害に被災して、休業4日以上となった方が毎年10万人以上、死亡された方が毎年900人前後になっています。一般に、こうした労働災害を防止する対策のうち、労働者の負傷を防ぐことを「安全対策」、疾病を防ぐことを「衛生対策」と呼びます。

◆NG1 解説

「え?あぁ、あの機械ね。新しいったって、従来のよりちょっとグレードアップしただけだから、作業内容が変わってもマニュアル読めば大丈夫、大丈夫。安全教育なんて必要ない、ない!」
労働安全衛生規則第35条(労働安全衛生法第59条)は、事業者に対し、労働者を雇い入れる時や作業内容を変更する時に、遅滞なく、安全衛生教育を行うことを義務付けています。
実際に作業を行う労働者や労働者を指揮・監督する者が安全衛生についての知識や技能を十分に有していないと、安全衛生対策も実効をあげることが出来ません。特に、危険有害な業務に従事する労働者が安全衛生についての知識、技能を十分に持たないまま、作業方法を誤ってしまうと、大きな労働災害につながりかねません。安全衛生教育は、労働災害を防止するうえで大変重要な意義を持っています。

◆NG2 解説

「どうしてもというなら、就業時間外に志願制でやればいいだろう」
労働安全衛生法で実施が義務付けられている安全衛生教育は、労働災害の防止を図るため、事業者の責任において実施しなければならないものです。したがって、所定労働時間内に行うのが原則ですが、都合によりそれができず、法定労働時間外に行う場合は、36協定の協定時間内で、かつ所定の割増賃金を支払わなければなりません。
また、該当する労働者すべてを教育の対象にする必要があります。志願者のみというわけにはいきません。

◆NG3 解説

「ところで、業務中に脚立から落ちたのはあなたのミスだし、労災保険は使わないわよ。休んだ期間のお給料は出ないから」
労災保険の給付は、労働者本人に過失があっても給付されます。労災保険には「労働者の保護」という目的があるからです。休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額の休業給付と、20%相当の休業特別支給金が給付されます。休業1~3日目の休業補償は、労災保険から給付されないため、平均賃金の60%以上を労働基準法に基づいて事業主が直接労働者に支払う必要があります。

◆NG4 解説

「報告なんかしなくていいわ!」
休業4日以上の労働災害が発生したら、遅滞なく労働基準監督署に「労働者死傷病報告(様式23号)」を提出しなければなりません。休業1日以上4日未満の労働災害については、4半期ごとに「労働者死傷病報告(様式24号)」を提出する必要があります。
労働者死傷病報告の提出義務違反には、罰則がついています。「労災隠し」は違法行為であり、犯罪です。

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