第9章 働き方改革は現場の意識から改めよ!

概説

2018年6月末、《改正労働基準法(以下、改正労基法)》など主要8つの法律で構成される《働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下、働き方改革関連法)》が可決成立しました。2017年3月に閣議決定された働き方改革実行計画に基づくものであり、「日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革」として、時間外労働の上限規制、年休5日の付与義務及び同一労働同一賃金などの大きな法改正がなされたものです。

◆NG1 解説

「有給休暇を取るか取らんかは社員の自由だし、別に取らん者がいても会社は放っておいていいだろう?」
年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えることとされていますが、職場への配慮やためらい等の理由から取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得が課題となっています。
このため、労働基準法が改正され、2019年4月から、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました(改正労基法39条7項)。同条違反に対しては、罰則規定(30万円以下の罰金)が設けられています。
詳細については、厚生労働省ホームページ内の「働き方改革特設サイト(支援のご案内)年次有給休暇の時季指定」(https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/salaried.html)をご覧ください。

◆NG2 解説

「有給休暇を取るか取らんかは社員の自由だし、別に取らん者がいても会社は放っておいていいだろう?」
《働き方改革関連法》は正規雇用労働者のみならず、非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)にも適用されます。したがって、年10日以上の年休が付与される者であれば、パートやアルバイト、派遣社員等の非正規雇用労働者であっても年次有給休暇の5日付与義務の対象となります。
また、時間外労働の上限規制も非正規雇用労働者に対しても適用されます。
さらに、2020年4月1日から、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差が禁止されます(ただし、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年4月1日から)。

◆NG3 解説

「忙しけりゃ無制限で残業しなきゃなんないし、何か会社が罰を受けるわけじゃないだろ?」
労基法では、労働時間は原則として、1日8時間、週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」といいます。休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされています。これを「法定休日」といいます。法定労働時間を超えて労働者に時間外労働を行わせる場合や法定休日に労働させる場合には、時間外労働・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長への届出が必要です。
2019年4月施行の《改正労基法》では、法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなりました。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守らなければなりません。
(1)時間外労働が年720時間以内
(2)時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
(3)時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて1月当たり80時間以内
(4)時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
上記に違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

◆NG4 解説

「働き方改革が関係するのは大企業だけ!オレたち中小企業には関係ないよ」
大企業のみならず、中小企業にも《働き方改革関連法》は適用されます。年次有給休暇の5日付与義務については、2019年4月から大企業とともに、中小企業にも適用されています。時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月から適用されていますが、中小企業は2020年4月から適用となります。また、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止についても、2020年4月から施行されます(ただし、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年4月1日から)。

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