働き方改革の目指すもの

少子高齢化が進展し、今後さらに生産年齢人口の減少が見込まれる中で、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現し、労働生産性を向上させることを目的とした働き方改革を進めるため、2018年(平成30年)7月6日に「働き方改革関連法」が公布されました。

同法においては、長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現及び雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目的とし、8本の主要な法律が一括改正され、順次施行されています。その主な内容は以下のとおりです。
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時間外労働の上限規制 って何だろう?

労基法制定(1947年)以来、初めて時間外労働の上限が罰則付きで規定されました!

● 時間外労働の上限規制(改正労基法36条、改正労基則16条等)
1 労基法上、労働時間は、原則として、1週40時間、1日8時間と法定されていて(32条)、使用者がこれを超えて労働させた場合には32条違反として処罰される可能性があります(119条1号)。ただし、時間外・休日労働協定(以下「36協定」)がある場合にはその範囲で上記の原則的労働時間を延長して労働させることができ、協定の範囲内であれば32条違反にはなりません。
上限規制というのは、この36協定による労働時間の延長の時間の上限を規制するものです。これまで法律本文では、36協定で定める限度が規定されておらず、厚生労働大臣告示で時間外労働の上限や特別条項の規制がされてきました(36条旧2項)。
今回の改正では、この厚生労働大臣告示で定めていたものを、労基法の法文にして、労働時間の延長の限度(上限時間)の設定を行いました。

2 改正労基法に定められた、時間外労働の限度時間は、原則として月45時間、年360時間となりました(36条4項)。臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません(36条5項)。
そして、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、
① 時間外労働が年720時間以内
② 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
③  時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
④ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月(6回)が限度
ということになりました(36条5項、6項)。

3 新たに罰則規定(119条1号)の対象となった改正労基法36条6項違反となるのは、36協定で定められた時間数にかかわらず、実際に、時間外労働と休日労働の合計が月100時間以上となった場合、時間外労働と休日労働の合計が2~6か月平均のいずれかで80時間を超えた場合となります。

● 36協定届の新様式(改正労基則16条)
法改正に伴い、36協定で定める必要がある事項が変わったため、36協定届の新様式が策定されました。
特に、時間外労働と休日労働の合計を100時間未満、2~6か月平均80時間以内とすることを協定する必要があることから、36協定届の新様式では、この点について労使で合意したことを確認するためのチェックボックスが設けられ、チェックがないと協定が無効となります。

● 36条協定指針(平成30年9月7日 厚生労働省告示第323号)
法改正に伴い、新たに36協定指針が策定され、指針3条では、使用者の責務として労契法5条に規定する安全配慮義務、指針5条では、限度時間を超えて延長時間を定めるに当たっての留意事項、指針8条では限度時間を超えている労働者の健康福祉確保措置が規定されています。指針8条で規定された健康福祉確保措置については、36協定届の新様式(特別条項)において、その記載欄が設けられています。

●適用猶予・除外の事業・業務(改正労基法139条~142条、同36条11項)
時間外労働の上限規制については、次のような適用猶予、適用除外の事業、業務が設けられています。
≪適用猶予≫
1 建設事業(改正労基法139条、)
法施行5年後の令和6年4月1日から、時間外労働の上限規制を適用。ただし、災害時における復旧・復興の事業については、1か月100時間未満・2か月ないし6か月平均で月80時間以内の要件は適用されません。

2 自動車運転の業務(改正労基法140条、)
法施行5年後の令和6年4月1日から、時間外労働の上限規制を適用。ただし、適用後の上限時間は、年960時間以内となります。また、時間外労働と休日労働の合計を100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されず、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月までとする規制も適用されません。

3 医師(改正労基法141条)
法施行5年後の令和6年4月1日から、時間外労働の上限規制を適用。ただし、2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されず、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月までとする規制も適用されません。適用後の上限時間は、一般的な診療従事勤務医については、1か月100時間未満・年960時間以内、特例水準(連携B、B、C-1、C-2)の指定を受けた医療機関でその指定に係る業務に従事する医師については、1か月100時間未満・年1,860時間以内、いずれの医療機関においても面接指導、労働時間短縮・宿直回数減等適切な措置が講じられた場合には、1か月100時間未満は適用されません。

4 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業(改正労基法142条、改正労基則71条)
法施行5年間は、時間外労働と休日労働の合計を100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。法施行5年後に、一般則を適用。
≪適用除外≫

5 新技術・新商品等の研究開発業務(改正労基法36条11項)
医師の面接指導とその結果に基づく代替休暇の付与等の健康確保措置の実施を義務付けた上で(新安衛法66条の8の2)、時間外労働の上限規制は適用されません。

●中小企業に関する経過措置
 時間外労働の上限規制は、大企業については2019年(平成31年)4月1日から、中小企業については、2020年(令和2年)4月1日から施行されています。
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Q&A
「働き方改革関連法」は、労働法の70年ぶりの大改正ということで、法律ではじめて時間外労働の上限規制が定められたということですが、今回の改正で罰則が適用される改正労基法36条6項違反となるのはどのような場合でしょうか? 違反例を示して説明してください。外部リンクアイコン
36協定届に新たにチェックボックスが設けられましたが、何故設けられたのですか?チェックボックスには、「2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと」となっていますが、2箇月から6箇月までとは、36協定の対象期間となる1年間についてのみ計算すればよいのでしょうか? また、チェックボックスにチェックしない場合は、どうなるのですか? 特別条項を設けておらず、かつ、時間外労働時間数と休日労働時間数を合計しても1か月80時間に満たない内容の36協定についても、チェックボックスへのチェックが必要ですか?外部リンクアイコン
36協定の過半数代表者の要件が改正されたということですが、その内容はどのようなものですか? 新たに規定された、改正労基則6条4項の使用者に求められる「必要な配慮」とはどのようなものですか? 過半数代表者の要件とはどのようなものですか? 過半数代表者の要件を満たさない場合は、36協定の効力はどうなるのですか?外部リンクアイコン
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Check02

年次有給休暇の時季指定 ってどういう意味?

●年休の5日付与義務
 年次有給休暇(以下「年休」)の取得促進を目的に、2019年(平成31年)4月1日以降、10日以上の年休が付与される労働者(パートタイム労働者、管理監督者も含む。)に対し、その基準日(年休の付与日)から1年以内に5日の年休付与義務が使用者に課せられることとなりました(改正労基法37条7項参照)。同条違反に対しては、新たに罰則規定(30万円以下の罰金)も設けられており、使用者に対し年休5日の付与義務を強く課すものです。なお、当該義務が生じるのは当該年度ごとに10日以上の年休が付与された場合であり、繰り越し分は含めません。他方で、実際に取得した年休日数の算出(5日)については、前年度から繰り越された年休の取得日数も含めます。

●時季指定の時季
 使用者による時季指定の時期については、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能です。したがって、2019年(平成31年)4月以降の基準日時点でただちに使用者に指定義務が課せられるものではありません。基準日から1年以内に、労働者本人が自ら5日(1日単位または半日単位でも可)の年休を取得したり、計画年休をもって5日分の付与がなされた場合には、使用者の年休指定義務自体が消滅します。このため、年休5日付与義務への対応にあたっては、一般的に計画年休制度の導入や会社独自で夏休み時期等の年休取得促進をもって、年休5日以上付与を進めることが適切でしょう。

●年休5日付与義務への対応
 実務対応上の準備としては、まず直近年の年休取得5日未満の労働者(管理監督者等を含む。)をリストアップし、年休未取得の要因分析を行い、早い段階から取得勧奨をなすことが考えられます。その上で基準日から半年経過以降、年休取得が3〜4日未満の労働者がいる場合、年休取得計画を策定し、その後の取得状況が芳しくないようであれば、労働者本人の意向を聴取した上で使用者による時季指定を行う対応が一例としてあげられます。また今回の改正に併せて、使用者には、労働者ごとに年次有給休暇管理簿(取得時季、日数及び基準日記載)の作成、就業規則への記載も義務づけられていて、対応が必要です。

●就業規則の規定例
 就業規則への規定例としては次のものが厚労省から示されており参考となります。

●条●項(使用者による年休時季指定義務)
(略)年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては(略)、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、(略)年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。
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Check03

同一労働同一賃金 ってどういう意味?

●基本的な考え方
 同一労働同一賃金は、同一企業内で、通常の労働者(いわゆる正規雇用労働者及び無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差を解消し、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を目指すものです。不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、教育訓練などを含めたあらゆる待遇において、取組が必要です。
 女性、若者、高齢者等の多様で柔軟な働き方の選択を広げるためには、わが国の労働者の約4割を占める非正規雇用労働者の待遇改善がたいへん重要です。通常の労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消することによって、どのような雇用形態を選択しても納得して働き続けることができることを目指しています。
 働き方改革においては、この「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を目指して、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」)、労働契約法、労働者派遣法等の改正が行われました。主な改正事項は次のようなものです。

●有期雇用労働者とパートタイム労働者を同一の法規制へ
 改正前においては、パートタイム労働者については、パートタイム労働法があり、①雇入れ時の労働条件の明示、②就業規則作成変更時におけるパートタイム労働者の代表者からの意見聴取、③不合理な待遇の相違の禁止、④通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の差別的取扱いの禁止、⑤教育訓練の実施、⑥行政機関による紛争の解決援助などによって、その保護が図られていました。他方、有期雇用労働者については、労働契約法第20条において、不合理な労働条件の禁止が規定されていただけでした。
 そこで、今回の改正では、パートタイム労働法の名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム・有期雇用労働法)」に変更し、有期雇用労働者も同法の対象に含まれ、今後は、パートタイム労働者と同様の保護が有期雇用労働者についても図られることになります。

●均等・均衡待遇に関する規定の明確化
 同一労働同一賃金の実現のためには、正規雇用・非正規雇用の雇用形態に関係なく、就業の実態が同じであるなら待遇も同じにする均等待遇と、就業の実態が異なるならばその差異に応じて待遇を決める均衡待遇が求められることになります。
 パートタイム・有期雇用労働法第8条において、パートタイム労働者・有期雇用労働者の全ての待遇を対象に、その待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間で、「職務の内容」「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む)」及び「その他の事情」のうち、待遇のそれぞれの性質及びその待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとする均衡待遇が設けられています。
 また、パートタイム・有期雇用労働法第9条において、通常の労働者と職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であるパートタイム労働者・有期雇用労働者について、その全ての待遇を対象に、パートタイム労働者・有期雇用労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないとする均等待遇規定が設けられています。
 改正前のパートタイム労働法、労働契約法では、均等・均衡の判断を、待遇の全体を包括的に行うのか、個々の待遇ごとに行うのか明確ではありませんでしたが、今回の改正では、個々の待遇ごとに行うことが明確にされました。
 なお、派遣労働者についても、労働者派遣法が改正され、派遣労働者については派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保又は一定の要件を満たす労使協定による待遇の確保のいずれかが求められることになりました。


働き方改革関連ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
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