バイト中に休憩をまったく取れない、試験前でも休ませてもらえない、厳しい販売ノルマがある、パワハラやセクハラを受けて困っているなど、アルバイトを始めてみると様々なトラブルに見舞われることがあります。
アルバイトでも残業代をもらえるのでしょうか、有給休暇は取れるのでしょうか、といった疑問の声も聞きます。

このようなアルバイトをめぐるトラブルや疑問について、解決するためのポイントを確かめてみましょう。

働くときの条件を確認したい

CASE.01

アルバイトを始めることになりました!
バイト代や勤務時間(働く時間)などの条件について説明を受けたのですが、「募集広告に書いてある通りだよ」とだけ言われて終わりました。正直ちょっと不安です…。

条件を書いた書面を必ずもらって、内容を確認して働き始めましょう!

後で「最初に聞いた話と違う!」と困らないように、アルバイト先から時給や働く時間について書かれた書面をもらって保存しておきましょう。
法律上も、雇う側が働く人に
①アルバイトをする期間
②仕事の内容や働く場所
③働く時間や休日
④時給
⑤辞めるときのきまり
など重要な条件を示した書面を渡すか、働く人が希望すれば、Fax、電子メール、SNS等で通知することとなっています。内容をきちんと確認して、働き始めましょう。

期間、場所、時間・休日、時給、退職のルールなど、しっかり確認しておこうね!

お給料に関するトラブル

CASE.02

バイト代は月末に支払われることになっていたのですが、月末になっても「ちょっと待ってくれ」と言ってなかなか支払ってくれません!

請求しても支払ってもらえないようであれば、労働基準監督署に相談してみよう!

法律では、バイト代などの賃金について、「賃金の支払いの5原則」というルールがあります。バイト代は、
①通貨で、
②全額を、
③労働者に直接、
④毎月1回以上、
⑤一定の期日に支払われなければなりません。
バイト代を払ってくれない、支払いが遅れているなどのトラブルがある場合は、最寄りの労働基準監督署へ相談してください。

「通貨で」「全額を」「労働者に直接」「毎月1回以上」「一定の期日に」支払わなければいけないということが、賃金支払いの5原則!

CASE.03

最初の月は研修中なので、バイト代は時給600円と言われました。
安すぎると思いますが、これって仕方ないことなの!?

時給は最低賃金額以上でなければなりません!

バイト代などの賃金は、雇う人と働く人の間の契約によって決まりますが、都道府県ごとに「最低賃金」が定められており、これを下回ることはできません。最低賃金額以上のバイト代を払ってくれないなどのトラブルがある場合は、最寄りの労働基準監督署へ相談してください。
また、都道府県ごとの最低賃金はこちらで見られます。

CASE.04

遅刻を3回したら、ペナルティということで1日分のバイト代がお給料から減らされちゃいました!

減給制裁にも制限があります!

遅刻を繰り返すなど職場の秩序を乱すルール違反をしたことを理由に、働くときの規則に基づいて、本来もらえる賃金の一部が減らされることがあります(これを減給といいます。)。
しかし、事業主(アルバイト先)はルール違反をした人に対して無制限に減給することはできません。1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。また、何回もルール違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における賃金の総額(月給制なら1か月にもらえる金額)の10分の1以下でなくてはなりません。
アルバイト先で減給のトラブルがある場合は、最寄りの労働基準監督署へ相談してください。

1回の減給額は、「平均賃金の1日分の半額」が限度。総額は、「1賃金支払い機の賃金総額の10分の1」が限度ですよ!

勤務時間·残業·有給休暇のトラブル

CASE.05

1回6~8時間バイトをしていますが、休憩がまったく取れない日が多くてつらいです…

6時間を超えて働く場合は、休憩が取れます!

法律では、アルバイトに対しても以下のような休憩時間を与えなければならないことになっています。
①働く時間が6時間を超え、8時間以下の場合には少なくとも45分
②働く時間が8時間を超える場合には少なくとも1時間
なお、6時間ちょうどの場合は、法律上は休憩を与えることは義務とされていません。

*「以上・以下」と「超え・未満」の使い分け
「以上・以下」は、そのちょうどの数字を含み、「超え・未満」は、そのちょうどの数字を含みません。
休憩を与えなければならないのは、「6時間を超え」る場合ですので、6時間ちょうどの場合は、法律上は休憩を与えることは義務とされていません。ただ、6時間を1秒でも超えれば少なくとも45分の休憩を与えなければなりません。8時間ちょうどの場合は、「8時間以下」として少なくとも45分の休憩を与えなければなりませんが、8時間を1秒でも超えれば1時間の休憩を与えなければならないことになります。

働く時間が6時間を超えたら少なくとも45分、働く時間が8時間を超えたら少なくとも1時間の休憩時間が必要ですよ。ゆっくり休んでね!

CASE.06

バイトに入る前や上がった後に、オーナーや店長の指示で開店準備や後片付け、次の勤務の準備をさせられています。
その分の時給はもらえないのですが、これっておかしくないですか!?

仕事の準備や後片付けの時間分は、バイト代として請求できます!

法律上、あなたを雇っている人(オーナーなど)や上司(店長など)の指示などに従って行う仕事については、その分の時給がちゃんと支払われなければなりません。
ちなみに、「毎回15分未満は切り捨て」という計算のしかたは原則として法律違反です!

CASE.07

店長に「アルバイトに残業代なんか出ない」って言われたのですが、本当ですか!?

アルバイトでも、残業代をもらえます!

法律では、1日の労働時間は8時間以内、1週間の労働時間は40時間以内と定められています。この労働時間のルールは、アルバイトにも適用されます。
アルバイトであっても、仕事が非常に忙しい時期などには残業を頼まれることがあるかもしれません。
労働基準法では、働く人に残業をさせる場合のルールが定められています。具体的には、次のような場合は、残業手当が支払われることになります。

①1日8時間または週40時間(※ 一部例外あり)を超えた場合は、通常の賃金の25%以上の割増賃金
②1か月に60時間を超える時間外労働の割増率は50%
また、午後10時から午前5時までに働いた場合は、25%以上の割増賃金(深夜手当)が支払われます。

たとえば時給1,000円のバイトをしている場合、25%以上の割増賃金がつくと時給1,250円以上で、時間外労働と深夜が重なった場合は、25%+25%=50%以上(1,500円以上)になります。

割増賃金は「すべての労働者」に適用されます!バイトだからもらえない、ということはないよ

CASE.08

店長にアルバイトには有休がないって言われたのですが…本当ですか!?

アルバイトでも、一定の条件を満たせば、有休が取れます!

年次有給休暇とは、働くことになっている日に仕事を休んでも賃金をもらえる休暇で、いわゆる「有休」や「年休」のことです。年次有給休暇は、正社員、パート、アルバイトなどの働き方の違いに関係なく、次の条件を満たす場合、取ることができます。

・雇われた日から6か月以上継続勤務した方
・決められた労働日数の8割以上出勤した方

また、毎年、決められた労働日数の8割以上出勤した場合は、有休をとれる日数が増えます。
詳細は、「アルバイトを雇う際、始める前に知っておきたいポイント」をチェックしてください。

CASE.09

18歳未満ですが、午後10時を超えても仕事をさせられます。正直しんどいです!

18歳未満の方に、原則、午後10時を超えて仕事をさせることはできません!

法律上、原則として18歳未満の方に午後10時から翌日午前5時までの深夜労働をさせることはできません。
また、原則として時間外労働(法定労働時間を超えて残業をさせること)や休日労働(法定休日に労働させること)をさせることもできません。

CASE.10

アルバイトを始めるときに決めた曜日(回数)や時間を無視して、授業の日でもシフトを入れられてしまいます。
テストの日も休ませてもらえないから、単位を落としそう!

一方的にシフトを変更されて困る時は、はっきりと断りましょう!

シフトを変更するには、事前に働く人と雇う人の合意が必要です。決められた曜日や時間を無視して無理矢理シフトに入れられるなど、一方的にシフトを変更されて困る時は、はっきりと断りましょう!
また、決められた曜日や時間に急に学校の行事などが入ってしまった時でも、諦めずにオーナーや店長などによく相談しましょう。

シフト変更を依頼されるイラスト

バイト中に病気やケガをしたら…

CASE.11

バイト中にけがをしましたが、店長からは、健康保険を使って自腹で治療するようにいわれました!

アルバイトでも、仕事中のけがは、労災保険が使えます!
健康保険は使えません。

仕事が原因の病気やけが、で病院に行くときは、労災保険を使うことができます。
労災保険は、正社員、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、また、1日だけの短期のアルバイトも含めて、補償の対象になります。病院の窓口で労災保険を使うことを申し出てください。労災保険に請求して、労災と認められた場合、治療費は基本的に無料となります。
また、仕事や通勤が原因のけがなどで仕事を休み、バイト代をもらえない場合に一定額のお金がもらえる制度もあります。

会社が労災保険の加入の手続きをしていない場合や、会社が請求書の提出に協力してくれない場合でも、労災請求を行うことができますので、最寄りの労働基準監督署へ相談してください。

通勤中のケガや、アルバイト中のケガは、労災として認められます!

ノルマを強制されたら…

CASE.12

自社製品の販売ノルマがあり、達成しない場合は、買い取りを義務付けるという決まりがあります。
せっかくのバイト代がそれに消えちゃって困っています!

買い取る義務はありません!

一定のノルマを課して、それに達しない者に購入を義務付けるという決まりは、働く人の経済生活を脅かすようになり働く人が自由意思により購入するとはいえないことから、合理性(※納得できる理由)を欠き、無効となります。ノルマを達成できなかったからといって、自腹で買い取る必要はありません。

ノルマを強制されているイラスト

セクハラ·パワハラを受けている

CASE.13

バイト先で、セクハラを受けています!

「嫌です、止めてください。」と、ハッキリと相手に伝え、相談窓口に相談しましょう!

セクハラとは、職場で、性的な冗談を言われたり、食事やデートへ執ように誘われたり、不必要に身体に触られたりするなど、自分が望まない性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、働きにくくなることをいいます。セクハラは、男性から女性に対するものだけでなく、女性から男性に対するもの、同性に対するものも該当します。

法律では、事業主(アルバイト先)は職場でセクハラがおきないようにする義務があります。
セクハラの被害にあったときは、嫌だということと止めて欲しいという意思をハッキリと相手に伝えましょう。また、セクハラに至る状況や言動等を忘れないうちにできるだけ正確に「メモ」して残すようにしてください。そして、職場の相談窓口や、都道府県労働局などの相談機関にできるだけ早く相談して下さい。

セクハラについての詳細はこちら
都道府県労働局の相談窓口は、最寄りの雇用環境・均等部(室)へ

CASE.14

バイト先で、パワハラにあっています!

パワハラをしている人に止めるように意思表示をして、相談窓口に相談しましょう!

パワハラとは、同じ職場で働く人に対して、地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり又は職場環境を悪化させたりする行為をいいます。

なお、パワハラは、仕事をする上で必要な教育・訓練・指導との線引きが難しく、例えば、仕事上の失敗について上司の叱り方が不愉快だったとしても、業務の適正な範囲で行われている場合は、パワーハラスメントにはあたりません。
パワハラにあっていると感じた場合は、パワハラに至る状況や相手の言動を正確に記録して、会社の相談窓口や、都道府県労働局などの相談機関にできるだけ早く相談して下さい。

パワハラについての詳細はこちら
都道府県労働局の相談は、最寄りの総合労働相談コーナーへ

解雇·退職に関するトラブル

CASE.15

オーナーから、突然「君は、この会社に合わないからもう来なくていいよ」と言われました。
もう黙って辞めるしかないの!?

アルバイトでも、会社が自分の都合で自由に辞めさせることはできません!

雇う人からの申し出によって一方的に職場を辞めさせることを「解雇」といいますが、アルバイトだからといって、簡単に解雇できるものではありません。いつでも自由に行えるものではなく、社会の常識に照らして納得が得られる理由が必要です。

また、雇う人は、会社のルールに労働者を解雇することができる場合を記載しておかなければならないことになっています。そして、どんな合理的な理由があっても、解雇するときには、原則として少なくとも30日前に解雇の予告をしておく必要があります。
予告なしで解雇する場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告から解雇するまでの日数が30日に満たない場合には、足りない日数分の平均賃金を、解雇予告手当として支払う必要があります。例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要があります。

解雇の予告も解雇予告手当の支払いもなく、突然の解雇を告げられて困っている場合は、最寄りの労働基準監督署へご相談ください。

CASE.16

アルバイトを辞めさせてもらえません。「辞めるなら代わりを連れてこい」と言われます!

原則として、退職はいつでもできます!

アルバイトを含む労働者は、原則として会社を退職することをいつでも申し入れることができます。代わりの人を無理して探す必要はありません。
法律では、あらかじめ契約期間が定められていないときは、退職届を出すなど退職の申入れをすれば、2週間経てば辞めることができると定められています。
ただし、急に辞めてしまうと、アルバイト先が困ることもあるでしょうから、アルバイト先とよく話し合ってください。

悩み·トラブルを相談したい

CASE.17

アルバイトのトラブルで困ったときは、どこに相談したらいいんだろう?

「総合労働相談コーナー」・「労働条件相談ほっとライン」に相談を!

アルバイトをして、労働条件など労働関係で困った場合は、全国の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働相談コーナー」に相談してください。総合労働相談コーナーでは、労働条件、募集・採用、いじめなど、労働問題に関するあらゆる分野についての相談を、専門の相談員が、面談あるいは電話で受けています。相談は無料です。

全国の総合労働相談コーナーの所在地や連絡先については、こちらをご覧ください。

また、労働基準監督署が閉庁している夜間及び休日の場合には、フリーダイヤルで相談を受け付ける「労働条件相談ほっとライン」にご連絡ください。

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