裁判例

1.採用

1-1 「採用の自由」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

基本的な方向性

(1) 企業には、経済活動の一環として行う契約締結の自由があり、自己の営業のためにどのような者をどのような条件で雇うかは、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由とされています。特定の思想、信条を有する者をその故をもって雇い入れなくても、当然に違法とはできません。
(2) 労基法3条は雇入れそのものを制約する規定ではありません。

三菱樹脂事件(S48.12.12最大判)

【事案の概要】
(1) 大学卒業と同時にYに採用されたXが、3か月の試用期間満了直前に本採用を拒否されことから、労働契約関係の存続を求めて提訴したもの。なお、Yが本採用を拒否したのは、Xが大学在学中に学生運動に関与した事実を身上書に記載せず、面接の際にも秘匿したことが詐欺に該当し、また、管理職要員としての適格性がないとするものであった。
(2) 最高裁は、雇用契約上の権利を認め賃金の支払いを命じた東京高裁の判決を破棄し、差戻した。
(3) なお、差戻審で和解が成立し、Xは職場に復帰した。
【判示の骨子】
(1) 憲法14・19条は、専ら国や公共団体と個人の関係を規律するもので、私人相互の関係を直接規律することを予定したものではない。
(2) 企業者は、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件で雇うかを、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に決定できるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、当然に違法とはできない。
(3) 企業者が、労働者の採否を決定するにあたり、労働者の思想、信条を調査するあるいはその者に申告させることも、法律上禁止された違法行為といえない。
(4) 労基法3条は雇入れそのものを制約する規定ではない。
(5) 解約権の留保は、採用当初は、その資質・性格・能力その他いわゆる管理職要員としての適格性などを判定する資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものであるが、これを行使できるのは、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認される場合に限られる。

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