第3章 過重労働に屈するな!

概説

会社は、働くことによって社員が健康を害することがないよう配慮する義務があります(労契法5)。長時間労働は、社員を心身ともに消耗させ、健康被害を及ぼす可能性があるため、会社は社員に長時間労働させないようにすることが重要です。
会社は、社員を週40時間、1日8時間を超えて働かせてはならないと定められています(労基法32)。この時間を超えて働かせる場合は、事前に36(サブロク)協定と呼ばれる労使協定を結んでおかなければなりません(労基法36)。もちろん、この協定にも限度があり、厚生労働大臣が定める基準に沿っている必要があります(労基法36)。
また会社は、時間外に労働させた時間に応じて割増しされた賃金を支払わなければなりません(労基法37)。ほかにも、長時間労働によって疲労が蓄積している社員には、医師による面接指導や状況に応じた健康確保対策を講じなければなりません。(労安法66条の8、9)

◆NG1 解説

「まぁ、協定って言ってもな、軽い線引きだから、死守しなくてもいいだろうよ」
いかなる会社も、36協定の範囲を超えて時間外労働させることはできません。それは法律違反として、刑事罰を科せられる可能性もあります。
今回の部長のように、36協定そのものを軽く考えたうえ、部下の残業(時間外労働)の状況を把握していないことは、上司としてあるまじきことです。

◆NG2 解説

「もともと協定っていうものは、会社と従業員が自由に決めていいんだから、残業の時間なんて、そうきっちりしなくても、なぁ。君は体力もあるし、終電続きくらい大丈夫だよね。」
実際1か月に100時間、または月平均80時間を超える時間外労働によって、何かしらの疾患が発症した場合、長時間労働と健康被害の関連性が強いという判断から、労働災害として認定されるケースが多くあります。
今回の部長のように、会社や上司の都合で、部下に過度の時間外労働を強いることは許されることではありません。会社は36協定を守り、健康に悪影響を及ぼすような長時間労働をさせてはいけないのです。

◆NG3 解説

「君らの残業時間は36協定で月MAX45時間までと決まっているから、そこまでしか残業代は支払いませんからね」
会社は、社員に時間外労働時間に応じて割増賃金(残業代)をきちんと支払わなければなりません。たとえ、36協定を超えた違法な時間外労働が発生したとしても、その時間に応じた割増賃金を支払わなければなりません。
会社が勝手に割増賃金の支払限度を36協定の範囲内と決め、それを超えた時間外労働時間分の支払わない場合は、法律違反となります。
今回の係長の発言は明らかに問題です。時間外労働が何時間になったとしても、会社は、社員が働いた分の割増賃金を支払わなければならないのです。

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