目次目次

しっかり学ぼう!働くときの基礎知識

働く方へ

過重労働の防止

1長時間労働・賃金不払残業

キャラクターキャラクター

働き過ぎではありませんか?

  • 労働時間のきまりは守られていますか?
  • 休日のきまりは守られていますか?
  • 休憩は取れていますか?
  • 年休は取れていますか?

時間外・深夜・休日に働いた場合の割増賃金は支払われていますか?

長時間労働、過労死・過労自殺、サービス残業、年休が取れない、など長時間労働、過労死・過労自殺、サービス残業、年休が取れない、など






1.労働時間のきまり

どんな仕事でも、長時間続けて働くことは心身ともに大きな負担となります。最近では、過労によるストレスなども大きな問題となっています。労働者が働き過ぎにならないように、労働時間や休憩・休日についても、きちんと決められています。
就業規則には始業や終業の時刻が決められていますが、働く時間の長さは法律で制限されています。労働基準法(以下「労基法」といいます。)では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めています(法定労働時間、労基法32)。

変形労働時間とは

変形労働時間

1箇月単位(労基法32の2)や1年単位(労基法32の4)などの変形労働時間制がありますが、これは法定労働時間を超える労働時間を所定労働時間とすることができる制度で、その場合は法定労働時間を超えるものであっても「残業」や「法定休日労働」ということにはならないものです。
1箇月単位は就業規則に規定するか労使協定により、1年単位は労使協定により、一定の期間の所定労働時間を平均して週40時間(特例事業場では1箇月単位の変形労働時間の場合は44時間)を超えない定めをすれば、あらかじめ特定した週、日について法定労働時間を超える所定労働時間とすることができます。
特定された週や日の時間を使用者が自由に変更できません。
労使協定はいずれも所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

労働時間適正把握ガイドラインとは

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(H29.1.20基発0120第3号)の主な内容

使用者には、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務があり、その責務を誠実に履行しなければなりません。そこで、厚生労働省では、以下のガイドラインを定め、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を明らかにしています。

1.趣旨
労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。
2.適用の範囲
本ガイドラインの対象事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定が適用される全ての事業場であること。
3.労働時間の考え方
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。
4.労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
(1)始業・終業時刻の確認及び記録
使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
  • ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
  • イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
  • ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
  • イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
  • ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
    特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
  • エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
    その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
  • オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
    さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。
(4)賃金台帳の適正な調製
使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。

詳しくは厚生労働省ホームページをご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

2.休日のきまり

労働契約で労働義務がないとされている日のことを休日といいます。使用者は労働者に、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません(法定休日、労基法35)。

  • *何曜日を休日としても、また、週によって休日の曜日が異なっても労基法上は問題ありません。
  • *休日は、原則として午前0時から午後12時までの継続24時間の暦日で与えられなければなりません。
  • *1日のうち一部でも仕事をすれば、たとえ1時間くらいの短い時間であったとしても、その日は休日を与えられたことにはなりません(休日としていた日であれば、休日労働をしたことになります。)。
3.時間外労働・休日労働

使用者が法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合や法定休日に働かせる場合には、あらかじめ従業員の過半数代表者(過半数を組織する労働組合がある場合にはその労働組合)との間に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法36)。この協定は労基法第36条に規定されていることから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。
36協定により延長できる労働時間は、「時間外労働の限度に関する基準」(厚生労働省告示)で上限時間が示されており、協定内容はこの基準に適合するようにしなければなりません(原則週15時間、月45時間)。

過半数代表者とは

36協定締結の際の過半数代表者の選出手続き

過半数代表者は、次の点に注意し、適正に選出されなければなりません。適正に選出されていない過半数代表者と36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ても、その届出は無効となります。

  • (1) 過半数代表者は、36協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手の他に、労働者の話し合いや持ち回り決議などでも差し支えありませんが、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きによって選出されていることが必要です。
  • (2) 会社の代表者が特定の労働者を指名するなど使用者の意向によって選出された過半数代表者が協定当事者となった36協定は無効となります。
  • (3) 社員親睦会の幹事や代表者などを自動的に過半数代表者にするような取扱いによって締結された36協定は、36協定を締結するために選出された者との協定ではありませんので、無効となり、改めて、36協定の締結当事者となることの信任を得た上で協定し直す必要があります。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/36kyotei.pdf
時間外労働の限度に関する基準とは

限度基準(「労働基準法第36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10.12.28労働省告示154号、最終改正:平成21.5.29厚生労働省告示316号。以下「限度基準告示」)

36協定の延長時間(時間外労働に相当する時間)は

  • ①1日
  • ②1日を超え、3か月以内の期間
  • ③1年間

の3つについて協定しなければなりません。なお、②③の延長時間は、限度基準告示で次の限度時間以内としなければならないものとされています。

時間外労働時間の限度基準
 一般労働者の場合対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の適用労働者
期間 限度時間 限度時間
1週間15時間14時間
2週間27時間25時間
4週間43時間40時間
1か月45時間42時間
2か月81時間75時間
3か月120時間110時間
1年間360時間320時間

ただし、次の事業または業務にはこの限度時間は適用されません。

  • ①工作物の建設等の事業
  • ②自動車の運転の業務
  • ③新技術・新商品などの研究開発の業務
  • ④その他労働基準局長が指定する事業または業務
    (郵政事業の年末年始における業務、船舶の改造・修繕に関する業務など)
    注:ただし④の年間限度時間には、表の限度時間が適用されます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/040324-4.html
4.割増賃金のきまり

時間外や深夜(原則として午後10時〜午前5時)に労働させた場合に、使用者は、1時間当たりの賃金の25%以上増し、法定休日に労働させた場合には1時間当たりの賃金の35%以上増しの割増賃金を支払わなければなりません。また、1か月に60時間を超える時間外労働の割増率は、50%以上増しとなります(当分の間、中小企業には適用が猶予されています)。

労働者は、時間外労働、深夜労働をした場合、労基法37条に基づき割増賃金の支払いを請求することができます。

割増賃金を計算してみましょう!

割増賃金を計算する女の子 割増賃金を計算する女の子

下記の例は、最低基準の割増率による割増料金の計算方法です。これにあなたの時給(月給制の場合は例3)を当てはめて割増賃金を計算して、法定どおりの割増賃金が支払われているかどうかチェックしましょう。

例1時間外労働、深夜労働の割増率

[所定労働時間が9:00から17:00、翌日5:00まで働いた場合(休憩時間1時間)]

17:00~18:00の場合、1時間あたりの賃金×1.00×1時間(法定時間内残業)、18:00~22:00の場合、1時間あたりの賃金×1.25×4時間(法定時間外残業)、22:00~5:00の場合、1時間あたりの賃金×1.50(1.25+0.25)×7時間(法廷時間内残業+深夜)と計算します。

例2法定休日労働の割増率

[9:00から24:00まで働いた場合(休憩時間1時間)]

9:00~22:00の間の労働時間は、1時間あたりの賃金×1.35×12時間(休日労働)、22:00~24:00の間の労働時間は、1時間あたりの賃金×1.60(1.35+0.25)×2時間(休日労働+深夜)と計算します。

例3月給制の場合の割増賃金の計算方法

月給制の場合も1時間当たりの賃金に換算してから計算します。
月給額(各種手当を含んだ合計※)÷1年間における1か月平均所定労働時間数=A円
A=1時間当たりの賃金額
*この金額にそれぞれの割増率を掛けて1時間当たりの残業代を計算します。

【具体例】

割増賃金の計算方法

※次の手当は原則割増賃金の算定基礎から除外します。
①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金。
ただし、これらの手当は名称ではなく実質によって判断します(例えば、住宅手当の名目で、全員に一律で支払われている場合には、その一律部分は算定基礎に含めます)。

割増賃金はすべての労働者に適用されます!

使用者は、派遣社員、契約社員、嘱託社員、パートタイム労働者、アルバイトにも割増賃金を支払わなければなりません。
なお、派遣社員の時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金は、派遣元に支払う責任があります。

5.休憩のきまり

使用者は、1日の労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも60分の休憩を勤務時間の途中で与えなければなりません(労基法34)。
休憩時間は一部の業種を除き、原則として、すべての労働者に一斉に与え、自由に利用できるようにしなければなりません。
ただし、一斉休憩の原則が適用される業種でも、労使の間で協定すれば、交替で休憩を与えることができます。
なお、休憩中でも電話や来客の対応をするように指示されていれば、それは休憩時間ではなく労働時間とみなされます。

6.年次有給休暇のきまり

年次有給休暇とは、所定の休日以外の日に仕事を休んでも賃金を支払ってもらうことができる休暇をいいます。労働者の心身の疲労を回復させるためにも、また、仕事と生活を調和させるためにも、年次有給休暇の取得は重要です。労働者が6か月継続して勤務していて、全労働日の8割以上を出勤していれば、10日間の年次有給休暇が与えられます。その後、勤続年数が1年増えるごとに、8割以上の出勤の条件を満たしている限り、休暇日数も増えていきます(20日が上限、下図参照)。

また、与えられた日から1年間で取得しきれなかった年次有給休暇は、翌年に繰り越すことができますが、さらに1年間使われなかったときは時効により消滅します。
年次有給休暇は利用目的を問われることなく、取得できます。年次有給休暇の取得時期は、労働者が自由に指定することができます(時季指定権)。しかし、その指定した時期に年次有給休暇を取得すると会社の正常な運営を妨げる場合においては、会社が別の時季に休暇日を変更することができます(時季変更権)。なお、会社は年次有給休暇を取得したことを理由に、労働者を不利益に取扱ってはならないとされています。

アルバイトやパートタイム労働者でも、①6か月間の継続勤務、②全労働日の8割以上の出勤、③就労すべき日が週5日以上であること、という3つの要件を満たせば、正社員と同じ日数の年次有給休暇が与えられます。なお、就労すべき日が週4日以下であっても、週の所定労働時間が30時間以上であれば、正社員と同じ日数の年次有給休暇が与えられます。また、週の所定労働時間が4日以下でかつ週の所定労働時間が30時間未満の場合でも、その所定労働日数に応じた日数の年次有給休暇が与えられることになります(下図参照)。

年次有給休暇の付与日数(週の所定労働日数が5日以上又は週の所定労働時間が30時間以上の労働者)
勤務年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

〈例〉4月5日採用の場合は10月5日に10日を与え、その後、毎年10月5日に上記の表に該当する日数を与えます。給料の締切日や勤務シフトの期間とは全く関係なく、採用日から起算します。

比例付与日数(週の所定労働日数が5日以上又は週の所定労働時間が30時間以上の労働者)
週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
勤務年数
6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
4日 169~
216日
7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~
168日
5日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~
120日
3日 4日 5日 6日 7日
1日 48~
72日
1日 2日 3日

*所定労働日数が週により決まっている場合は「週所定労働日数」、それ以外の場合には「1年間の所定労働日数」で判断します。

*年の途中で労働日数の契約が変わった場合であっても、付与日時点の所定労働日数で計算します。

*時間単位で年次有給休暇を取ることができます。

年次有給休暇は日単位で取得することが原則です。しかし、労使が協定すれば、年に5日を限度として時間単位で取得できます。なお、この労使の協定には、対象労働者の範囲や時間単位で取れる年次有給休暇の日数(年に5日以内の日数)等を規定しなければなりません。
また、労働者が希望し使用者が同意した場合は、労使で協定していない場合でも、半日単位で年次有給休暇を取得できます。

7.問題を解決するための機関
労働基準監督署等の機関イメージ

*勇気を出して労働基準監督署に行ってみよう!
*できれば労働契約書や給与明細などの資料も持参

労働基準監督署等の機関イメージ

労働時間、休日、休憩、年次有給休暇のきまりが守られていないなどの疑いがある場合は、労働基準監督署に「申告」する方法があります。

例えば、残業(深夜労働・休日労働を含む)しているにもかかわらず割増賃金が支払われないといった賃金不払残業(いわゆる「サービス残業」)などは、労働基準監督署に申告すれば、労働基準監督官が直接会社に改善を求めていきます。
また、都道府県労働局の「あっせん」手続を利用することも、会社があっせんに応じてその場に出てくれば有効な方法です。
なお、あっせんは都道府県労働局のほか、労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーでも総合労働相談員が相談に応じ、その申請を受け付けています。何かおかしいなと思ったら、勇気を出して最寄りの労働基準監督署や都道府県労働局の窓口を訪ねてみましょう。

労働所・労働局への申告やあっせんは無料です 労働所・労働局への申告やあっせんは無料です

賃金不払残業などの問題を解決するには、上記のほか、労働組合を通じてのあるいは加盟しての交渉、裁判所(労働審判・訴訟)への申し立てなどの方法もあります。労働基準監督署・都道府県労働局への申告やあっせんは無料でできますが、裁判所への申立ては費用がかかりますし、弁護士を付けるとなれば弁護士費用も必要となってきます。
なお、どの機関に相談するにしても、自分の主張を裏付ける労働契約書や出退勤時間・残業時間、給与明細書等の資料を持参すれば、担当者の理解を得やすく、話が早く進むことが期待できます。

あっせんとは

「あっせん」

「あっせん」とは、紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。都道府県労働局ごとに設置されている弁護士、大学教授等の労働問題の専門家により組織された紛争調整委員会の委員の中から指名されるあっせん委員が、紛争当事者双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には、両者に対して事案に応じた具体的なあっせん案を提示します。
労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争(募集・採用に関するものなどを除く)が、対象となります。
あっせん案に紛争当事者双方が合意した場合には、受諾されたあっせん案は、民法上の和解契約の効力をもつこととなります。なお、あっせんの手続きは非公開となっており、紛争当事者のプライバシーは保護されます。また、労働者があっせんの申請をしたことを理由に、事業主がその労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

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2安全(健康)配慮義務・健康障害防止

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毎日の長時間労働で心身の調子を崩していませんか?

  • 安全配慮義務は尽くされていますか?
  • 病気の予防は行われていますか?
    • 健康診断は実施されていますか?
    • 医師による面接指導は該当者に行われていますか?
    • 衛生管理者は選任されていますか?衛生委員会は設置されていますか?
  • 働き過ぎて病気になった場合、労災請求していますか?
1.安全(健康)配慮義務違反に基づく損害賠償請求権

使用者には、「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮」をする義務があります(労契法5)。
この安全配慮義務の具体的内容は、それが問題となる具体的状況によって異なります(陸上自衛隊八戸車両整備工場事件 最三小判 S50.2.25川義事件 最三小判 S59.4.10)。

安全配慮義務には、心身の健康を確保するための配慮も含まれています。心身の健康の側面から見た配慮義務を「健康配慮義務」と呼ぶことがあります。この配慮義務の具体的な内容は、それが問題となる状況によって異なります。
安全配慮義務違反があったことによって心身に被害が及んだ場合、労働者は、

(1) 債務不履行(安全配慮義務違反)により被った損害の賠償を請求する権利(民法415、消滅時効10年)

(2) 使用者に故意過失があって被害を受けた場合には、その不法行為により被った損害の賠償を請求する権利(民法709、消滅時効3年)

(3) 直接、指揮命令している管理職が労働者に過重な労働をさせて労働者の心身に被害が及んだ場合も同様に、労働者はその管理職に不法行為により被った損害の賠償を請求する権利(民法709)、さらに、使用者にも使用者責任(民法715)に基づいて損害の賠償を請求する権利

があります。

また、取締役など労働者に直接、指揮命令しているわけではない役員についても、現実の労働者の労働状況を認識していた、あるいは容易に認識できる立場にあった場合には、全社的に過重労働があることを知っていたのに適切な措置を取らなかったことにより、労働者に発生した健康被害について、当該取締役個人に損害賠償責任が課せられることがあります。

安全配慮義務違反が問題となった代表的な判例はこちら
【裁判例①】長時間労働の結果、うつ病を発病し、自死したことによる損害賠償を認めた事案

【概要】

新入社員である労働者A(20代男性)が、恒常的な長時間労働に従事した結果、うつ病に罹患(りかん)し自死するに至ったことから、遺族が会社に損害賠償を請求した事案。

4月に入社したAは、6月に配属されて以来、長時間労働で深夜の帰宅が続き、同年11月末ころ以降は、仕事で帰宅できない日があるようになり、翌年7月以降は、さらに業務の負担が増加した。その結果、心身共に疲労困ぱいしたことが誘因となって、遅くとも同年8月上旬頃には、うつ病に罹患し、入社1年5か月後の同月下旬、自死するに至った。

【判決要旨】

(1) Aについて、長時間労働によるうつ病の発病症の結果としての自死という連鎖が認められ、Aの業務の遂行とうつ病罹患(りかん)による自死との間には、相当因果関係がある。
(2) Aの上司らは、Aが恒常的に著しい長時間労働に従事していることや、その健康状態が悪化していることを認識しながら、帰宅して睡眠をとり、業務が終わらないのであれば、翌朝出勤して行うようになどと指示したのみで、その負担を軽減させるような措置を取らなかったことにつき過失がある。
(3) 以上より、使用者は、民法715条(使用者等の責任)に基づき、Aの死亡による損害を賠償する責任を負う。

【結果】

差戻し後の控訴審で、会社が、遺族に対し、損害賠償として多額の損害賠償金を支払うことで和解が成立しています。

【コメント】

この判決は、会社には、労働者の労働時間や業務内容が過重になっていないかどうかを配慮し、健康状態がすぐれない様子がうかがわれる場合にはその負担を軽減させるなど配慮する義務があることを示しています。

電通事件 最高裁二小判 H12.3.24
【裁判例②】労働者の基礎疾患である高血圧を過重労働が増悪させたと認めた事案

【概要】

コンピューターソフトウエア開発会社の労働者B(30代男性)は、昭和54年の入社以来毎年、年間総労働時間が約3,000時間におよび、平成2年3月以降5月までの間、月間総労働時間が約270~300時間の恒常的な長時間労働に従事した結果、基礎疾患である高血圧が増悪し、高血圧性脳出血により死亡した。

【判決要旨】

(1) 会社は、雇用契約上の信義則に基づいて、使用者として労働者の生命、身体及び健康を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を負う。
(2) 高血圧患者は、脳出血などの致命的な合併症を発症する可能性が相当程度高いこと、持続的な困難かつ精神的緊張を伴う過重な業務は高血圧の発症及び増悪に影響を与えるものであることからすれば、使用者は、労働者が高血圧に罹患し、その結果致命的な合併症を生じる危険があるときには、当該労働者に対し、高血圧を増悪させ致命的な合併症が生じることがないように、持続的な精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにするとか、義務を軽減するなどの配慮をするべき義務があるというべきである。
(3) 会社は、Bが入社直後から高血圧に罹患し、昭和58年ころからは心拡張も伴って相当程度増悪していたことを、定期健康診断結果で認識していたのであり、具体的な法規の有無にかかわらず、使用者として、精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにするとか、業務を軽減するなど配慮する義務を負っていた。
(4) 取引先から作業の完了が急がされているプロジェクトのリーダーとして業務に就かせている以上、裁量労働制の下にあったことをもって、安全配慮義務違反がないとすることはできない。

【結果】

控訴審で、会社が、遺族に対し、損害賠償として多額の賠償金を支払うことを命じています。

【コメント】

この判決は、高血圧が要治療状態に至っていることが明らかな労働者には、脳出血などの致命的な合併症が発生する蓋然性が高いことを考慮して、労働者から業務軽減が申し出られていなかったとしても、業務を軽減するなどを配慮すべきであると判断しています。
ただ、Bにも、高血圧で治療が必要な状態であることを知っていたこと、精密検診を受けるように指示されていたのに受診していなかったことに過失があるとして、50%の過失相殺がなされています。

システムコンサルタント事件 東京高裁 H11.7.28
【裁判例③】自己申告制により労働時間を管理する場合には、実態調査などにより労働者の健康を害さないように注意すべき義務を負うとした事案

【概要】

電気通信工事等を目的とする株式会社で空調衛生施設工事等の現場監督業務に従事していた労働者C(30代男性)が、恒常的な長時間労働に従事した結果、うつ病に罹患して自死した。死亡前1年間の毎月の時間外労働が123時間から176時間に及んでいたが、時間外労働及び休日労働は自己申告制となっていた。

【判決要旨】

(1) 被告会社では、自己申告制が採られていたのであるから,厚生労働省が策定した労働時間適正把握基準(平13.4.6基発第339号)に照らして、労働者に対し,労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分に説明するとともに、必要に応じて自己申告によって把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて実態調査を実施するなどし、労働者が過剰な時間外労働をすることを余儀なくされ、その健康状態が悪化することがないように注意すべき義務があったというべきである。
(2) 被告会社は、労働者に対して、労働時間の実態を勤務票に正しく記録し、適正に自己申告を行うよう指導したり、また、労働者の労働時間に関する実態調査をすることもなく、その結果、労働者の心身の健康に悪影響を与えることが明らかな極めて長時間に及ぶ時間外労働の状況を何ら是正しないで放置していたものであり、不法行為を構成する注意義務違反があったものというべきである。

【結果】

控訴審で、会社が、遺族に対し、損害賠償として多額の損害賠償金を支払うことで和解が成立しています。

【コメント】

この判決は、自己申告制を採っている場合であっても、長時間労働の実態を把握できたのにこれを放置していたことを安全配慮義務違反(注意義務違反)と判断しています。なお、本件では、過失相殺は認められませんでした。

九電工事件 福岡地裁 H21.12.2
【裁判例④】恒常的な長時間労働で死亡した労働者の損害賠償責任が取締役個人にもあるとした事案

【概要】

4月に入社した労働者D(20代男性)は、7月までの4か月間、特段の繁忙期でないにもかかわらず、毎月少なくとも80時間を超え、最大約140時間の恒常的な時間外労働に従事した結果、同年8月に、急性心不全により死亡した。

【判決要旨】

(1) 急性心不全により死亡したのは、恒常的な長時間労働に起因しており、会社が安全配慮義務を尽くさなかったこととの間に相当因果関係がある。
(2) 80時間の時間外労働を基本給に組み込んだ給与体系や勤務体系を採り、36協定でも100時間の時間外労働を許容するなど、労働者の生命・健康を損なわないような体制を構築していなかった。
(3) 全社的に恒常的な長時間労働が存在していることを知っていたのに、これを抑制する措置が取られていなかったことから、「役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法429 ①=その職務を行うに悪意又は重大な過失があった当該役員等は、これによって生じた第三者の損害を賠償する責任を負う旨)」による役員個人の責任も認める。

【結果】

会社と会社役員が、遺族に対し、損害賠償として多額の賠償金を支払うことを命じています。
※最高裁が、上告棄却・上告申立不受理とした(最3小決 H25.9.24)ことにより、確定。

【コメント】

この判決は、直接の上司ではなくても現実に多数の従業員が長時間労働に従事していることを知っているかあるいは容易に知ることができる場合には、会社だけでなく、会社役員についてもこれを是正する義務があることを認めたものです。

大庄事件 大阪高裁 H23.5.25
2.健康診断についてのきまり

使用者は、常時使用する労働者に、雇入時と雇入れ後1年以内に1回の定期健康診断を実施する義務があります。また、深夜業を含む業務に常時従事する労働者には、6か月以内に1回の特定業務従事者健康診断を実施する義務があります。

*健康診断の費用は、使用者の負担となります。

また、常時50人以上を使用する事業場では、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)が義務付けられています(安衛法66条の10、50人未満の事業場は当分の間努力義務)。
このストレスチェックの結果、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者は、申出を行うことにより、医師による面接指導を受けることができます。
なお、ストレスチェックの結果は、本人の同意なく会社に提供されない仕組みになっていますので、安心して受検しましょう。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
3.医師(産業医等)による面接指導のきまり

医師(産業医等)による面接指導制度は、長時間の労働により疲労が蓄積し健康障害発症のリスクが高まった労働者について、その健康の状況を把握し、これに応じて本人を指導するとともに、その結果を踏まえた措置を講じるものです(下図参照)。
月100時間を超えてあるいは月80時間を超えて時間外・休日労働を行った場合は、医師による面接指導を受診できるよう、事業者に申出を行いましょう。

事業者、労働者、医師の関係図

4.衛生管理者・衛生委員会についてのきまり

常時50人以上の労働者を雇用する事業場では、衛生管理者を選任するほか、衛生委員会を設置しなければなりません(安衛法12、18)。衛生管理者の職務は、労働者の健康を管理するとともに、衛生委員会において過重労働対策を話し合い、労働者にその内容を知らせることなどとなっています。
仕事場では誰が衛生管理者なのか、また、衛生委員会からお知らせが職場に掲示されていたらどのような内容か確認してみてください。

5.長時間労働と労災認定

長時間にわたる過重な労働の結果、脳・心臓疾患を発症または精神障害を発病した場合、労災の認定基準に該当すると労災として認定されることになります。最近では、精神障害に係る労災の請求件数及び支給決定件数はともに増加しています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089447.html

精神障害に係る労災請求・決定件数の推移

脳・心臓疾患に係る労災請求・決定件数の推移

脳・心臓疾患に係る労災請求・決定件数の推移

精神障害に係る労災請求・決定件数の推移

労災保険とは

(1) 仕事が原因であるいは通勤中に、怪我をしたり疾病に罹ったりした場合には、労働者災害補償保険法に基づいて、治療費や治療のために会社を休んだ場合の給料の一部などが補償されます。労災保険は雇用保険と異なり、
①保険料は全額を事業主が負担し、
②被保険者であった期間に関係なく、補償の対象となります。
また、アルバイトなども含め雇われている人全体(役員などは除く)が対象としてなります。

(2) 労災保険からは、①療養補償給付、②休業補償給付、③障害補償給付、④遺族補償給付などが給付されます。
このうち①は、現物支給としての医療行為と医療費全額が給付され、自己負担はありません(通勤災害の場合のみ200円負担。なお、健康保険による治療の場合には3割を自己負担)、②は、療養のために休業する期間中、平均賃金の8割(休業補償給付6割+特別支給金2割)が補償されます。

(3) 各種保険金の給付は、基本的には労働者(多くの場合、会社や社会保険労務士が代行します)が指定の請求書を用いて所轄労基署に請求します。
ただし、治療費は、治療した病院が請求することとなります。

① 脳・心臓疾患の認定基準

脳・心臓疾患の認定基準(H13.12.12 基発第1063号)では、労働時間と脳・心臓疾患の発症との関連性について以下のとおりの医学的知見が示されています(下図参照)。

(1)発症前1か月間に概ね100時間を超える時間外労働が認められる場合、発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たり概ね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性は強いと判断される。

(2)発症前1か月間ないし6か月間にわたって、
a 1か月当たり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱く、
b 1か月当たり概ね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると判断される。

時間外・休日労働時間と健康障害のリスク

② 精神障害の認定基準

心理的負荷による精神障害の認定基準(H23.12.26 基発1226第1号)では、精神障害発病の原因となり得る、強い心理的負荷となる時間外労働時間数を、例えば

  • 1)発病直前の1か月におおむね160時間以上
  • 2)発病直前の3週間におおむね120時間以上
  • 3)発病直前の連続した2か月間に1月当たりおおむね120時間以上
  • 4)発病直前の連続した3か月間に1月当たりおおむね100時間以上

というように具体的に示しています。

6.問題を解決するための機関

1についての相談は、総合労働相談コーナーや労働組合等で応じられますが、訴訟を提起するとなると裁判所ということになります。

25についての相談は労働基準監督署又は総合労働相談コーナーで受け付けています。なお、労災申請は、労働基準監督署の中の労災課が窓口となります。

相談機関のご紹介はこちら