Q&A
法令・制度のご紹介
相談機関のご紹介
行政の取組
裁判例

スタートアップ労働条件

アルバイトを雇う際、始める前に知っておきたい ポイント

しっかり学ぼう 労働条件

動画で学ぼう!労働条件

アンケートにお答えください

凡例

法令の略記
・労基法:労働基準法
・労基則:労働基準法施行規則
・年少則:年少者労働基準規則
・最賃法:最低賃金法
・労契法:労働契約法
・賃確法:
  賃金の支払の確保等に関する法律
・安衛法:労働安全衛生法
条文等の表記
・法令略記後の数字:該当条文番号
・法令略記後の○囲みの数字:
  該当項番号
・法令略記後の( )囲みの漢数字:
  該当号番号
例:労基法12①(二):
  労働基準法第12条第1項第2号
通達の表記
・発基:大臣又は厚生労働事務次官名で発する労働基準局関係の通達
・基発:労働基準局長名で発する通達
・基収:労働基準局長が疑義に答えて発する通達
・婦発:婦人局長(現 雇用均等・児童家庭局長)名で発する通達

Q&A

雇用契約

Q

内定や内々定を取り消された時また、内定や内々定を辞退する時は、どのような点に気をつければよいのでしょうか?

A

採用内定について法的な定義はなく、また態様も様々ですが、一般的には、「労働者と使用者との間で一定の始期及び採用内定通知書又は誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合は解約できるという解約権留保を付して労働契約を締結した状態」を指すことが多いものと考えられます。
採用内定の状態において、既に、労働者と使用者との間に一定の労働契約が成立しているのであれば、使用者から内定を取り消されたり、又は労働者から内定を辞退したりすることは、一方的な契約破棄になります。
内定取消の場合には、解雇としての合理的な理由が必要ですから(労契法16)、労働者とすれば、その理由を開示してもらう必要があります。一方、内定者側からの内定辞退は、基本的に問題ないものの、それがあまりに信義則に反するような場合は、損害賠償を求められる可能性もあり得るので、誠実と言えるか否かについて考えておかなければなりません。
採用の内々定は、内定の段階に比べて多くの場合に労働契約を締結したとの認識には至っていないと考えられます。そのため、内々定の取消は解雇ではなく、また、内々定の辞退は契約の破棄ではないとも考えられますが、個別の事案によっては、拘束関係の度合いが強ければ「採用内定」と認められ、労働契約が成立していると判断されることもあり得るほか、労働契約は成立していない場合でも、採用内定の「予約」とされることにより、内々定の取消や内定の辞退が信義に反し、相手方の期待権を侵害したとして損害賠償責任が認められることもあり得ますので、双方で注意をしておかねばなりません。

詳しく知りたい方はこちら

採用内定

採用内定の法的性格は事案により異なりますが、 採用内定通知のほかには労働契約締結のため特段の意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められることが多いと考えられています。そのため、採用内定取消は解雇に当たり、労契法16条の解雇権の濫用についての規定が適用され、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利を濫用したものとして解雇(採用内定取消)は無効となります。

解雇としての合理的な理由

採用内定取消が解雇として有効とされるのは、原則的には①採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること、②この事実を理由として採用内定を取り消すことが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合に限られると考えられます(大日本印刷事件 最判昭54,7,20)。
具体的に考えられる内定の取消事由としては、ⅰ契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、ⅱ健康状態の悪化、ⅲ重要な経歴詐称、ⅳ重要な必要書類を提出しないこと、ⅴその他の不適格事由などが考えられます。さらに、経営状況の悪化による採用内定取消も考えられます。この場合については、基本的に整理解雇の場合に準じ、いわゆる整理解雇の4要素、すなわち①人員整理の必要性、②解雇回避の努力義務、③解雇対象者の選定の合理性、④手続の妥当性、を踏まえて、その有効性が判断されることになると考えられます。

採用の内々定

採用の内々定とは、内定の段階に比べて多くの場合に労働契約を締結したとの認識には至っていないと考えられます。そのため、内々定の取消は解雇ではなく、また、内々定の辞退は契約の破棄ではないとも考えられますが、個別の事案によっては、拘束関係の度合いが強ければ、「採用内定」と認められ、労働契約が成立していると判断されることもあり得るほか、労働契約は成立していない場合でも、採用内定の「予約」とされることにより、使用者側で合理的な理由なく、内々定を破棄すれば、期待権を侵害したものとして、学生や労働者側から損害賠償責任を負うことがあります。

内々定の取消

個別の事案によって、拘束関係の度合いによっては「採用内定」と認められることもあり得ますので、その場合には当該内々定取消の適法性は司法において判断されることとなります。

学生・労働者側からの内定辞退は

内定取消は使用者側の行為ですが、内定辞退は学生・労働者側から行う行為になります。内定の段階ですでに労働契約は成立していると認められる場合には、労働者側からする一方的な破棄は契約違反になりかねず、事由によっては損害賠償責任が課される場合があります。しかし、労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできないため、損害賠償責任に止まります。

学生・労働者側からの内々定の辞退は

内々定の辞退については、契約の破棄ではないとも考えられますが、個別の事案によっては、拘束関係の度合いが強ければ、「採用内定」と認められ、労働契約が成立していると判断されることもあり得るほか、労働契約は成立していない場合でも、採用内定の「予約」とされることにより、使用者側で合理的な理由なく、内々定を破棄すれば、期待権を侵害したものとして、学生や労働者側に対して損害賠償責任を負うことがあり得るとも考えられますが、学生・労働者が内々定を辞退する場合には職業選択の自由(憲法22条1項)があるために、内々定の辞退が違法になるということは殆んど考えにくいところです。

行政による規制

  • ①採用内定についての労基法の適用
    採用内定によって労働契約が成立していると認められれば、採用内定取消が解雇とみなされ、解雇予告等について規定する労基法20の解雇予告の適用がされる場合があります(※)。
    (※)採用内定者は、いまだ具体的な就労義務を負うことなく、賃金も支払われていないということから、労基法の適用を否定する裁判例もあります。
  • ②ハローワークによる指導
    採用内定取消事案については、ハローワークによる一元的把握を行い、企業に対する指導をするとともに、採用内定取消の内容が一定の場合(※)に該当するときは、学生生徒等の適切な職業選択に資するため、その内容を公表することができることとされています。
    • (※)・2年度以上連続して行われたもの
    • ・同一年度内において10名以上の者に対して行われたもの
      (内定取消の対象となった新規学校卒業者の安定した雇用を確保するための措置を講じ、これらの者の安定した雇用を速やかに確保した場合を除く。)
    • ・事業活動の縮小を余儀なくされているものとは明らかに認められないときに、行われたもの
    • ・内定取消の対象となった新規学校卒業者に対して、内定取消を行わざるを得ない理由について十分な説明を行わなかったとき。
    • ・内定取消の対象となった新規学校卒業者の就職先の確保に向けた支援を行わなかったとき。
  • ●裁判例
  • ①大日本印刷採用内定取消事件(昭54.7.20最二小判)
    要旨 採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。
    〇大日本印刷採用内定取消事件(昭54.7.20最二小判)
    https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/00173.html
  • ②日本電信電話公社事件(昭48.10.29大阪高判)
    要旨① 本件採用内定取消当時には、いまだ右始期は到来していなかったのであって、公社と被控訴人との間には具体的な労働契約上の法律関係は発生していないのであるから、労基法の立法精神が、もっぱら労働契約上の法律関係の存在を前提とし、そこにおける信条を理由とする均等待遇の原則を規定しているものである以上、労基法第3条の適用(同条にいう「労働条件」には「労働契約の締結」は含まれない)はこれを否定すべきである。
    要旨② 採用内定者である被控訴人はいまだ具体的な就労義務を負うことなく、賃金も支払われていないのであるから、労働基準法の適用は受けないものである。
    〇日本電信電話公社事件(昭48.10.29大阪高判)
    https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/00166.html
  • ③インフォミックス事件(平9.10.31東京地決)
    要旨 採用内定者は、現実には就労していないものの、当該労働契約に拘束され、他に就職することができない地位に置かれているのであるから、企業が経営の悪化等を理由に留保解約権の行使(採用内定取消)をする場合には、いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する〔1〕人員削減の必要性、〔2〕人員削減の手段として整理解雇することの必要性、〔3〕被解雇者選定の合理性、〔4〕手続の妥当性という四要素を総合考慮のうえ、解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができるかどうかを判断すべきである。
    〇インフォミックス事件(平9.10.31東京地決)
    https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/06985.html
「Q&A」によっても解決されない個別相談がある場合はこちら
さらに労働条件や就労環境のWEB診断を希望される方はこちら(スタートアップ労働条件)

一覧ページへ戻る
  • 厚生労働省法令等データベースサービス
  • e-Gov