裁判例

11.守秘義務

11-1 「守秘義務」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

基本的な方向性

(1) 労働契約上、労働者は使用者の業務上の秘密を保持すべき義務を負っています。
(2) 労働者が秘密保持義務違反をした場合、懲戒処分の対象となり得ます。
他方、労働者が自己の権利救済のために必要な企業秘密を含む情報を弁護士に開示したことについて、不当な目的とはいえず、秘密保持義務に違反したとはいえないとした事例があります。

日本リーバ事件(H14.12.20東京地判)

【事案の概要】
(1) 化粧品製造販売事業者Y社は、選択定年制(早期退職制)を利用して退職すると申し出たリサーチマネージャーXが同業他社への転職しようとしたことから、「営業秘密を洩らし、洩らそうとしたとしたことは明らかである」として懲戒解雇したところ、Xが、懲戒解雇の取り消し等を求めて提訴したもの。
(2) 東京地裁は、情報漏洩の態様が背信的であることから懲戒解雇を有効と判断し、Xの請求を棄却した。

【判示の骨子】
競業他社への転職が内定した後に、機密事項を扱う会議に出席して入手した資料を持ち出すなど背信性は極めて高く、Y社がXを懲戒解雇したことは、権利の濫用には当たらない。

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メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ事件 (H15.09.17東京地判)

【事案の概要】
(1) 投資顧問事業者Y社は、労働者Xが、職場内でいじめや差別等を受けているとして相談した弁護士に人事情報や顧客情報等が記載されている書類を無許可で開示・交付したとして、秘密保持義務違反等を理由に懲戒解雇したところ、Xは、懲戒解雇は無効であるとして、地位確認と未払賃金の支払を求めて提訴したもの。
(2) 東京地裁は、その労働者が秘密保持義務を負っていること、各書類の機密性を認めながら、相手は守秘義務がある弁護士であり、目的も自己救済であって不当とはいえないことなどから、秘密保持義務違反を否定し、懲戒解雇は無効と判示した。

【判示の骨子】
(1) 従業員は、労働契約上の義務として、業務上知り得た企業の機密をみだりに開示しない義務を負っている。
企業秘密に関する情報管理を厳格にすべき職責にあったXが、Y社の許可なしに、企業機密を含む本件各書類を業務以外の目的で使用したり、第三者に開示、交付したりすることは、特段の事情のない限り許されない。
(2) しかし、弁護士は、職務上知り得た秘密を保持する義務を有すること、Xが各書類を弁護士に開示、交付したのは、自己の救済を求めるという目的のためであって、不当な目的ではないことなどから、開示などしたことには特段の事情があり、秘密保持義務に違反したとはいえない。
(3) 各書類を弁護士に開示などしたことは、就業規則の懲戒条項に該当しないか、形式的には該当しても、目的、手段からすると違法性は帯びず、本件懲戒解雇は、事由を欠くか、軽微な事由に基づくものであり、権利の濫用として無効である。

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