裁判例

12.競業避止

12-1 「競業避止」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

基本的な方向性

(1) 競業の制限が合理的範囲を超えて職業選択の自由を不当に拘束する場合には、公序良俗に反して無効となります。なお、合理的範囲内か否かは、制限する期間、場所的な範囲及び職種の範囲、代償の有無等について、企業の利益と退職者の不利益等から判断されます。
(2) 競業活動をある期間制限したとしても、直ちに職業選択の自由を不当に拘束するものではなく、同業他社へ就職した場合に退職金の額を半額とする退職金規程も、退職金が功労報償的な性格を合わせ持っていることからすれば、合理性が無いとはいえないとした事例があります。

フォセコ事件(S45.10.23奈良地裁)

【事案の概要】
(1) 多くの技術的な秘密を要する各種冶金副資材を製造販売するY社の研究部に所属し同社の技術の中枢部に直接関与していたX1と技術的知識のある販売員であったX2は、在職中、退職後を含めての秘密保持契約と退職後2年間の競業避止契約を結ぶとともに、機密保持手当を受けていたところ、自己都合で退職して間もなく、A社の取締役に就任して競合商品を生産し、Y社の得意先とも取引を開始したことから、Y社は、秘密保持契約、競業避止契約に基づき競業行為の差し止めを求めて仮処分を申請したもの。
(2) 奈良地裁は、秘密保持契約・競業避止契約がいずれも有効であるとして仮処分申請を認容した。

【判示の骨子】
(1) その会社だけが持つ特殊な知識は営業上の秘密として保護されるべき法益であり、これを知り得る立場にある者に秘密保持義務を負わせ、退職後一定期間競業避止義務を負わせる特約は適法・有効である。
(2) 競業の制限が合理的範囲を超え、Xらの職業選択の自由等を不当に拘束し、同人の生存を脅かす場合には、その範囲は公序良俗に反し無効となる。この合理的範囲を確定するに当たっては、制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、会社の利益労働者の不利益及び社会的利害の三つの視点に立って慎重に検討していくことを要する。
(3) 競業避止義務を負う期間が2年間という比較的短期間であること、対象職種も比較的狭いこと、場所は制限されておらず、退職後の制限に対する保障はないものの現職当時には機密保持手当が支給されていたこと等の事情を総合すると、その義務は合理的範囲を超えているとはいえない。

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三晃社事件 (S52.08.09最二小判)

【事案の概要】
(1) 広告代理店Y社を、自己都合退職することとしたXは、今後同業他社に就職した場合には就業規則の定めに従い半額をY社に返還する旨を約して退職金を受け取ったが、同業他社へ入社したことを知ったY社から、支払済み退職金の半額を返還するよう求めて提訴されたもの。
(2) 名古屋地裁は、退職金の半額を没収するのは損害賠償を予定した約定に当たり、無効であるとして、Y社の訴えを棄却した。
しかし、名古屋高裁は、従業員の足止め効果を意図したものとはいえ、実質的に損害賠償を予定したものとはいえないとして、原判決を取り消し、最高裁もこれを支持した。

【判示の骨子】
(1) 同業他社への再就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、Y社が退職金規則で、右制限に反して同業他社に再就職した社員の退職金を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ持っていることからすれば、合理性のない措置とはいえない。
(2) こうした退職金の定めは、制限に反する就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか退職金の権利が発生しないこととする趣旨であると解すべきであり、この定めは、その退職金が労基法上の賃金にあたるとしても、労基法16条(損害賠償予定の禁止)、24条1項(全額払いの原則)、民法90条(公序良俗)等の規定に違反するものではない。

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